理事長挨拶
新年挨拶 2024年1月
龍の如く猛々しく、新しいことに挑戦する年に
理事長 西山 裕康
会員の皆様、明けましておめでとうございます。昨年中は、協会の諸活動にご理解、ご協力いただきありがとうございます。おかげさまをもちまして、大遇なく一年を終え、新年を迎えることができました。
コロナ感染症は、昨年5月に5類へ変更後、夏場にピークを迎え、11月からはインフルエンザとの同時流行となりましたが、大きな混乱には至りませんでした。会員の皆さまのご努力に敬意を表します。今後も流行を繰り返すと思われますが、医療従事者のコンセンサスを得て、外来・入院ともに通常の感染症と同じように取り扱うには、今少し時間がかかりそうです。関連する診療報酬は下がりましたが、患者さんを第一に考え、医療者としての衿持を保ちたいものです。
本年は4月に「診療報酬」「介護報酬」「障害福祉サービス等」のいわゆる「トリプル改定」が、秋には保険証廃止が実施される予定です。改定をめぐって、財務省は5・5%のマイナス改定が必要などと現場の実情を曲解した暴論を主張し、マスコミも鵜呑みにして報道しました。
3000万人以上が羅患し、7万人以上が亡くなられるという未曽有の感染症に全国の医療機関が奮闘したため、全体の医療費が増加し、医療機関の収入が一時的に増加するのも必然です。一部の医療法人の利益率のみを取り上げ、そのうえコロナ禍で受診抑制が起き最も収入が減少した2020年と比較し、利益が急伸したなどとするのは理解不能です。物価高騰や入件費の上昇、従業員不足により、医療機関の経営は悪化傾向が続いています。
医療機関の余剰利益は、すべてが医療への再投資に使われます。国民に安全、安心、日進月歩の医療を提供し、その生命と健康を守り、地域医療を充実させるため、また政府が求める賃上げ、従業員確保のためにも、大幅なプラス改定が必要不可欠でした。皆さまのご協力のおかげで「診療報酬の大幅引き上げを求める」医師・歯科医師署名は目標としていた2000筆を超え、これら現場の声におされ、本体改定率はプラス0・88%となりました。しかし、薬価等も含めた全体の改定率はマイナスであり、本体部分も現状の厳しい医療機関経営の改善に資するものではありません。今後、個々の算定点数が明らかになってきますが、さらなる改善・不合理是正を求めていきたいと思います。
この秋には保険証廃止が行われようとしています。12月の総点検後も国民の不安払拭や制度への信頼回復などは置き去りにされたままです。
未だシステムの利用率は5%以下のため、国民全員がマイナンバーカードで受診すれば、窓口でのトラブル噴出は必至であり、メリットを上回るデメリットが露呈するでしょう。
法案は成立しましたが、保険証廃止の撤回にむけ、これまで以上に活動を強めたいと思います。
2024年は「甲辰」にあたります。甲辰は、「成功という芽が成長していき、姿を整えていく」といった縁起のよさを表しているとのことです。努力と忍耐を積み重ね「龍の如く猛々しく、新しいことに挑戦する」年にしたいと考えております。
評議員会挨拶 2024年6月
兵庫県保険医協会
理事長 西山 裕康
本日は、お忙しい中、評議員会にご出席いただき有難うございます。また、平素は評議員として、協会の活動にご理解、ご協力を賜り有難うございます。最近の情勢と協会活動について、一言述べさせていただきます。この後の会務報告と重なる部分もあり、発言に対する答弁の中で補足させていただきますので、私の挨拶は短めとさせていただきます。
まずは、医療費削減と防衛費増額に関してです。
診療報酬改定は全体で0.12%のマイナス改定となりました。現場の実態を反映しない診療所の利益率の高さを取り上げ、マスコミによる後押しで、間違った世論が誘導され、診療所や病院間に分断が持ちこまれました。
一方で、防衛費は2027年で4兆円の財源を確保するとし、歳出改革のターゲットは政府予算の中で最も大きな「社会保障」、中でも柔軟性の高い医療費です。
医療費の増加が国を亡ぼす「医療費亡国論」にはじまり、財政を健全化しないとタイタニック号のように氷山にぶつかって日本は沈む、といって国民を脅かし社会保障を削る、一方で防衛費を増額する。これが現在の政府の姿勢です。
防衛費増額、医療費抑制では、国民の健康と命を守り、すべての国民に、安全・安心、必要かつ十分な医療を提供することはできません。
マイナ保険証に関して
12月2日には健康保険証の新規発行が取りやめられます。
マイナ保険証推進のために、マイナポイント、医療機関への支援金、診療報酬上の加算など、多額の税金をつぎ込みましたが、未だに利用率は5%で、国家公務員も同程度の利用率です。大半の国民が政府の言う利便性を感じていないからです。にもかかわらず、4月末には「日本健康会議」が「一丸となって利用促進に取り組む」との「マイナ保険証推進宣言」を行いました。
12月からは、資格の確認方法が8通りとなり、受付での混乱が増加するのは明らかです。保険証廃止は、政策の失敗であり中止するのが、普通の判断ではないでしょうか。推進する真の目的がほかにあると考えざるを得ません。
「医師の働き方改革」に関してです。
4月より「医師の働き方改革」が行われました。過労死ラインを超える時間外労働が容認される異常な状態が続きます。
m3のアンケートでは、「働き方改革」が労働環境改善につながると「思わない」と答えた勤務医は60%以上です。また、30%が「収入が減る」、約半数の大学病院が「場合により医師派遣を中止・削減する」としています。
「宿日直」いわゆる寝当直では睡眠時間が5時間以下が多く、これを「勤務時間」とするのは「納得いかない」とする勤務医が半数を超えています。現場の実態と大きくずれています。
働き方改革により、救急医療を中心とした提供体制の縮小など、地域医療に及ぼす影響は少なくありません。「宿日直」に名を借りた夜間休日のサービス残業、さらには医師給与の減少、診療経験と技術の低下が進みかねません。
現在、日本の人口1000人当たりの医師数は、OECD平均に対し約10万人少ない水準です。過去も現在も医師不足で、そして将来もOECDの平均にすら追いつきません。
現在の勤務医は、次世代の医療を支える後輩たちです。
医師と医療機関がともに健全で、安全・安心・最適な医療を提供するためには、「人員増強」とそれを支える「診療報酬の増加」が必要なのは明らかで、私たちの基本的要求です。
最後に私ども執行部は、医科歯科一体となり、事務局とともに、よりよい協会、よりよい地域医医療を目指して一層努力したいと思います。皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げます。
それでは、このあと、評議員会議案に関しましてご報告させていただきます。
総会挨拶 2024年6月
本日はお忙しい中、第56回総会にご列席いただき有難うございます。また、会員の皆様には、平素より協会の活動にご理解・ご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
最近の情勢について述べさせていただきます。
まずは、診療報酬改定です。本年4月の診療報酬改定では、本体部分は+0.88%に抑えられ、全体では-0,12%となり、5回連続のマイナス改定でした。
改定率はさしたる根拠なく、厚生労働大臣と財務大臣の折衝で決められますが、この数字が、現政権の医療に対する姿勢です。
医療機関の厳しい経営状況には背を向け、歳出改革の中心は医療・社会保障費の削減です。
なぜこのような状況が続いているのか。
さかのぼれば40年近く前のいわゆる「医療費亡国論」にはじまります。
当時の厚生官僚が「医療費をめぐる情勢と対応に関する私の考え方」として、「医療費は財政再建・行政改革の上でも予算編成の上でも、租税・社会保障負担の上でも、最大の問題の一つである」とのべています。
その中で、「医療費亡国論」として、「このままいけば、租税・社会保障負担が増大し、日本社会の活力が失われる」とし、だから公的医療費総枠の抑制をしよう、という主張です。時を同じくして失われた3-40年が始まりました。
2つめは、医療費需給過剰論です。
医療の供給と需要との間に「プライスメカニズム」が働かず、需給とも過剰気味で、いささか「無秩序な過剰」が支配している・・先生方の診療のことです。
地域ネットワーク構築や医学部定員の見直し、患者教育、かかりつけ医師、適正受診、自らの健康は自ら守る、患者一部負担の工夫、つまり負担増などが30年以上前から上げられています。
さらに、財務省は、日本の医療制度の4つの特徴である「国民皆保険」「フリーアクセス」「自由開業医制」「出来高払い」を「解決すべき課題」としています。
具体的には「公定価格の適正化、診療経営情報の見える化・・つまり診療報酬の抑制」
「医療提供体制の改革・・つまり病院の統廃合」
「公的保険でカバーする範囲の縮小・・つまり高度・高額な医療技術や医薬品の保険外し、そして今回の選定療養に名を借りた先発品使用の保険外しなどです。・・これらは自助、自己責任の押し付けに他なりません。
続いて「患者負担を上げて受診抑制からコスト削減へ、つまりゲートキーパ論を意識した「かかりつけ医」によるフリーアクセスの制限」と「出来高払いからマルメへの変更」であり、最終目標は人頭払い制度でしょう。
「医師の地域間、診療科間、病院・診療所間の医師の偏在解消」とし、自由開業性への規制的手法の採用、専門医の定数性や医師過剰地域の1点単価の減額などが、現在俎上に上がっています。
個別の反論も大事ですが、やはり大本である「医療費亡国論」を打破しなければなりません。
最強官庁である財務省に対抗するのは容易ではありませんが、政権交代以外の選択肢はないように思います。
時間の関係で総論の一部しか話せませんでしたが、具体的な昨年度の会務報告並びに新年度方針案、予算案に関しましては、武村、吉岡両副理事長からご報告させていただきます。
協会は今後も情勢に合わせ、「開業保険医の生活と権利を守る」「住民とともに地域医療の充実をめざす」ために、医科歯科一体となって、的確・迅速に対応していきます。
皆さまのご理解、ご協力をお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
総会祝賀会での挨拶 2019年6月
本日は、ご多用のところ、このように多数の方々にご臨席を賜り、「設立50周年祝賀会」を執り行うことが出来、誠に光栄の至りです。
高いところからだが、こうして、皆様の、お一人お一人のお顔を拝見すると、長きにわたり様々なご支援を賜った事を思い、感謝の念を禁じえない。誠にありがとうございます。
とりわけ、本日ご臨席の、医学・医療を指導していただいている病院の先生方、平素よりご懇意にさせていただき、たびたびご無理申し上げている国会議員の先生方、ご指導・ご鞭撻を頂いている「全国保険医団体連合会」並びに各都道府県の保険医協会・医会の先生方、私どもの活動にご理解ご協力をいただいている医療関係団体の皆様、共済事業を通じてご協力いただいている生命保険会社・損害保険会社の皆様、親しくお付き合いさせていただいている友好団体の皆様、お取引いただいている業者様、並びに協会顧問の弁護士、税理士の先生方に厚くお礼申し上げます。
ご来賓の方々のお名前をすべてご紹介することは叶わないが、ご参加いただいた皆様のお力添えとご支援のおかげ様をもち、本日50周年という喜びの節目を迎えることができ、あらためて皆様のご厚情に感謝申し上げます。
これからは、国民健康保険の都道府県単位化なども実行され、医療社会保障分野における都道府県の権限と役割が一層強くなっていきます。半ば強制的な機能別病床数のコントロールや医師の地理的偏在解消、県独自の診療報酬点数設定なども危惧されます。
さて、ここで協会の半世紀を、スライドを使って簡単にご紹介します。まず、初代理事長・桐島正義先生。協会は、1963年十数人の有志により結成された「兵庫保険医クラブ」を前身としています。保険医クラブ6年間の活動を経て1969年、764人の会員からなる「兵庫県保険医協会」が設立されました。「開業保険医の経営と生活、権利を守る」「国民医療の充実と向上をはかる」という二つの大きな目的を掲げてスタートしました。
初代歯科部会長・田村武夫先生。兵庫県保険医協会は、医師法・歯科医師法の第一条に定められているように、「公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保する」ために、早くより医科・歯科一体となって活動しています。
合志至誠・第二代理事長。1995年、阪神・淡路大震災が発生し、協会は被災患者支援と民間医療機関への公的支援拡充を求めました。「復興県民会議」を中心に、日本医師会の協力も得ながら、医療機関向けの助成制度を認めさせ、その後の災害対応の基礎となっています。
池尻重義・第三代理事長。協会は受診抑制を伴い、格差医療を招く「患者窓口負担増加」へは一貫して反対しています。協会は、財政優先の社会保障費抑制に対して、医療政策研究を重ね、会内外に発信し、国民とともに、皆保険制度を守り続けてきました。
第4代理事長・朝井栄先生。2000年には介護保険制度が創設されました。協会は医療だけにとどまらず、介護保険の充実をはじめ、命、健康を脅かす、いわゆる「健康の社会的決定要因」の改善にも力を注いできました。
前理事長・池内春樹先生。この当時、産科・小児科・救急を中心に「医療崩壊」がもたらされたのは、記憶に新しいかと思います。協会は、社会保障全般、あるいは健康に関する問題意識を共有する各団体とも協働して活動してきました。
協会設立当時の私。中学入学直後、人生で3カ月間だけ丸刈りを強制され、この頃より「非従順な知性」が芽生えていました。体重は50年でおよそ2倍になりました。まだまだ力不足ですが、歴代理事長に一歩でも近づけるよう、努力したいと思います。本日この日を、新たな50年へのスタートとしたいと思います。
当協会の50年間の活動と業績は、歴代理事長をはじめ、協会役員延べ259人を中心に、すべての会員、そして事務局員の協力と努力の結果です。この場を借りて、ご逝去された方、並びに先人たちのご尽力に感謝し、今日の慶事を共に喜びたいと思います。
お陰様を持ち、共に活動する会員数は、設立以来、毎年増加を続け、現時点では過去最高となる7520人となりました。医科歯科一体の協会としては全国2番目の規模となりました。
私ども協会の目的は「国民医療の向上と充実をはかる」ことです。これは立場を超えた国民の強い願いであり、私たち医師・歯科医師の責務であり、追い求め続け、達成すべき目標です。
兵庫協会は、今日のこの日を、先達たちが築き上げてきたこの道をより太く、明るく、はっきりと示す第一歩としたいと思います。
設立当初の情熱を忘れず、慢心することなく、医科・歯科一体となって、困難と問題に立ち向かい、理想と目標に向かって進むことを、会員一同改めて決意しています。皆様方におかれては、これまでと変わらない、ご指導とご鞭撻、ご理解とご協力をお願い申し上げます。
最後になりましたが、ご臨席賜りました皆様のご健勝とご多幸を祈念し、私のご挨拶とさせていただきます。有難うございました。
就任挨拶 2015年6月
兵庫県保険医協会
理事長 西山 裕康
この度、兵庫県保険医協会の理事長に就任いたしました西山裕康です。
平素は協会の活動にご理解、ご協力賜わりまして誠に有難うございます。私たち兵庫県保険医協会は、現在医師・歯科医師合わせて7200人を超える組織です。「患者住民とともに地域医療の充実・向上をめざす事」を大きな柱とし、命と健康を守る社会の実現に向け活動しています。
さて、最近の医療・社会保障改革を見ますと、小泉改革に始まる「公的医療にブレーキ」に加えて、安倍内閣における「医療の営利産業化にアクセル」という新自由主義的政策により、多くの医療関係者が巻込まれ、一部は押し切られあるいは取り込まれ、その結果、健康弱者を始めとする社会的弱者にその「しわ寄せ」が及んでおります。
日本の国民皆保険制度には、先人たちが作り上げてきた「いつでも、どこでも、だれでも」という理想があります。この理想を守り続ける事により、国民が最適な医療を享受できるという、世界に誇れる日本の医療制度を再確認し、その体制を堅持しさらに充実させるべきです。
「いつでも、どこでも、だれでも」に反する「今だけ、ここだけ、自分だけ」を決して良しとせず、「能力に応じて負担、必要に応じて給付、結果として所得再分配を伴う」という社会保障の原則を当然とし、基本的人権としての医療・社会保障を守り続ける活動に邁進したいと思っております。
兵庫県保険医協会の大きな柱は「患者・住民とともに地域医療の充実・向上をめざす」事です。そのためには皆様方のお力も必要ですので、今後とも協会の活動にご理解とご協力、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
以上、簡単ですが理事長就任の挨拶とさせていただきます。