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第91回評議員会での理事長のあいさつ
2017.05.21
本日は、お忙しい中、また汗ばむようなお天気の中、第91回評議員会にご出席いただきありがとうございます。また、平素は評議員として、協会の活動にご理解ご協力を賜りありがとうございます。
さて、昨今の医療・社会保障を取り巻く状況には厳しいものがあります。医療・介護においても不正の撲滅と無駄の排除、機能分化と切れ目のない連携は必要ですが、世界一高齢化が進む日本において、確実な需要の増加、つまり国民が必要としている医療・介護に投資せずに、国の活力と成長を取り戻すことはできません。
国民の切なる願いは、絶えず「医療・介護・子育て・福祉」のいわゆる社会保障の充実です。社会保障費の根拠なき機械的削減、診療報酬のマイナス改定、拙速な地域医療構想策定と強引な地域包括ケアシステムの構築、費用削減を主な評価指標とする給付や負担の「適正化」、健康弱者排除の「患者・介護利用者負担増」など、これまでの旧態依然とした方向は改めるべきです。
そのためには、医療費の増加により国が破たんするという「医療費亡国論」、医療に回すお金はないとする「財源不足論」、医療は国家財政の足を引っ張る「お荷物論」、医師や病床の供給が需要を生む「供給誘発需要悪玉論」などを克服、論破、払拭せねばなりません。
日本は少子高齢化が進行していますが、決して自然現象ではなく、政治の無策、政策の方向違いあるいは手遅れ・不足の結果です。すでに世界でも小さな政府に属する日本が、新自由主義的思想と政策により、さらに市場原理を優先させては、格差と貧困を広げるばかりです。規制は弱肉強食の世界から弱者を守るためにあります。今必要なのは、医療特区のような規制緩和ではなく、当事者の意見を十分に反映した地域に根差した地道な施策です。
政府は、既定の路線に反省の色を見せずに、「我が事・丸ごと」や「地域の助け合いは日本の原風景」などといい、さらには憲法に「家族の助け合い」を書き込もうとする本音などから見れば、社会保障における国家の責任を放棄し、自助、共助をことさら強調し、社会保障を隣近所の助け合いに変質させようとしています。これらは、決して政府が声高に叫んで音頭をとったり、法律や政策として国民に押し付けたり、縛るものではありません。
医療は、国民生活の向上に必要な社会的共通資本です。最近の各指標からも、決して経済成長のお荷物ではなく、欧州諸国のように、社会保障の充実と経済成長の両立は可能です。そして、人びとの健康や病気に影響を及ぼす社会的、経済的、政治的、環境的な条件、いわゆる「健康の社会的決定要因」に目を向ける事は、古くより世界共通の医師の責務の原点です。
命と健康に関するかぎり、国は、全国民に対し、格差なく平等に責任を持つべきであり、それは思想以前であり、憲法以前であり、まして政策以前の、当然なすべきことともいえます。同時に、私たち医療人が責任を持ってリードすべき内容でもあります。ともにがんばりたいと思いますので。ぜひご協力ください。
この後、協会の2016年度会務報告、2017年度活動方針案並びに2017年度予算編成方針と予算案の概要、次期役員選出等に関しまして、評議員会にお諮りいたしますので、よろしくご審議ください。
それでは、執行部に対する忌憚ないご意見、活発な討議をお願いしまして、ごあいさつとさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。