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第97回評議員会あいさつ
2020.11.15
本日は、お忙しい中、またコロナ感染症の再拡大がみられる中、第97回評議員会にご出席いただき有難うございます。また、平素は評議員として、協会の活動にご理解、ご協力を賜り有難うございます。
最近の情勢と協会活動について述べさせていただきます。
まず最初に、新型コロナウイルス感染症で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、現在も闘病を続けておられる方々にお見舞い申し上げます。また、現在、コロナは第3波の入り口といった様相を呈していますが、そのような状況の中、感染の危険性と風評被害の不安に立ち向かい、医療従事者としての使命と責任と覚悟をもって、献身的に医療を提供し続けている会員、従業員の皆様に対し、心より敬意を表します。
国民にとって最も必要なのは、各種会議のメンバーやTVに出演する専門家ではなく、このような第一線の医療従事者の努力だと再確認する次第です。
さて、ご承知のように突然の首相交代があり、新政権は前政権の政策を引き継ぐとの方針であります。
社会保障・医療においては、「75歳以上の窓口負担の2割への引き上げ」「介護の利用料引き上げ」など、コロナ禍においても、これまで通り患者・利用者の負担増をさらに進めようとしています。患者負担増の目的は「受診抑制」と「医療費負担の患者さんへの付け回し」に過ぎず、経済的弱者、健康弱者を中心に、受診抑制や早期発見治療の遅れ、重症化の危険性を高めます。同時に、「医療は平等だ」という国民皆保険制度による国民共有の意識を分断するでしょう。医療サービスの給付サイドに、年齢要件や所得による負担格差や分断を持ち込むべきではありません。詳しい内容は、この後に報告いたしますが、最も格差を持ち込んでいけない分野は医療である事だけは、重ねて強調させて頂きます。
さて、春からの一連の本会アンケートにより、新型コロナウイルス蔓延のため、「受診抑制」「患者数減少」が一気に進み、急激な回復は望めないどころか、現在春の状況が再現されるのではないかという不安があります。コロナ禍は自然災害と同じであり、経営悪化は決して個々の医療機関の責任ではありません。国には、高い公益性と非営利性を有する医療に対して、その経営補償を通じて、国民への医療提供体制を維持する責任があります。
私たちが要求する「概算請求」は、簡素で公平で、即効性と透明性を有しています。その基本的考え方は、「3月に遡って」「全医療機関を対象とし」「昨年度の請求実績に基づき」「100%全額」補償を求めるという4点です。この原則を共有し、これからも力強く主張していきたいと思います。この点に関しましては、協会の作成したパンフレットがございますので、お目通しの上、ご理解ご賛同願います。
続いてこの間の協会活動について申し上げます。
コロナ禍の中、移動と接触を制限されたため、協会活動も一時的に休止、あるいは縮小を余儀なくされております。しかし、このような有事の際、これを嵐の海に例えるなら、船のエンジンを止めたり、帆を全部下ろしたりすると、船は推進力とコントロールを失い、波風に翻弄され転覆しかねません。このような認識を共有し、今こそ「役に立ち頼りになる協会であるべし」という協会の原点に立ち戻り、執行部を中心に活動方法を見直し、事務局の理解と協力を得て、より一層精力的に活動しております。
具体的な活動とその成果としましては、
1点目はウエブを利用した活動です。4月の診療報酬点数研究会に始まり、各種研究会、日常診療経験交流会も会場とオンラインとのハイブリッド方式としました。オンライン方式は、遠方の先生方、日常診療でお忙しい先生方、新規開業や勤務医の先生方の参加も得やすいため、今後の協会の中心となるべき若い先生方の参加、協会活動のさらなる理解、啓発にも大いに役立つと考えています。と、同時にそのニーズをくみ取る努力を欠かさないようにしたいと考えています。このハイブリッド方式に関しては、当会の目的に照らし合わせ、どのようなメリット、デメリットがあるのか、十分に検討しながら、安定的に活用していければと思っています。
次に、力を入れた協会活動は、感染防護具等の迅速な手配と配布、コロナ関連の各申請、請求等における情報提供です。このような活動により、コロナ禍の中であっても、あるいはこのような有事の際だからこそ「役に立つ、頼りになる協会」が理解されていると手ごたえを感じています。
3点目は、組織拡大です。コロナ感染症の科学的知見、拡大状況を冷静に判断し、適切な感染防護対策のもと、組織拡大活動を続けています。お陰様を持ちまして、幸いにも感染者を出すことなく、現在過去最高の7634人の会員数を達成しております。会員数は私たちの活動に理解と賛同を示す医師・歯科医師の多さを具体的に「見える化」します。会員数は活動力の基盤であり、その増加は喜ばしい限りです。
さて、コロナの最大の脅威は、高齢者、基礎疾患のある人の重症化と死亡であり、その増加は医療崩壊の主な原因となるでしょう。このような人たちと、比較的症状の軽い若い人たちとが最も接するのは「医療機関」と「介護施設」です。もちろん歓楽街で働く人やスポーツ選手の検査、隔離、治療も大事ですが、医療機関や介護施設の患者、入所者、医療従業員に対する定期的な検査体制の充実が優先されるべきではないでしょうか。また、重症化のおそれのある患者を適切なタイミングで、高次医療機関にスムーズに転送する事も重要です。
ご承知のように10月には、一般の診療所が発熱・検査医療機関に指定されました。「現場に丸投げ」の感が否めませんが、上に政策、時には下策あれば、下に対策ありと言われます。執行部としては会員の意見を丁寧に拾い上げ、その対策を支えていきたいと考えています。
今回、コロナ禍により、医療提供体制の重要性と余力不足を、国民が目の当たりにしました。特に現在の欧米諸国の現状は危機的で医療崩壊も起こしています。日本も同じ状況に陥る危険性もあり、今こそ十分な医療提供体制を拡充すべきです。国民の命と健康を守る医師・歯科医師として、コロナ禍の中、医療の重要性を知った国民とともに、医療社会保障の充実に向かって活動しなければなりません。
私ども執行部は、「開業医の生活と権利を守」り、「患者・住民とともに地域医療の充実・向上をめざし」て、さらに運動を強化していきたいと思います。
この後、2020年度前半期の会務報告と後半期の活動方針、予算の前半期実績、後半期見通しについてご説明申し上げます。忌憚ないご意見、活発なご審議のうえ、ご承認いただきますようお願いいたします。以上をもってご挨拶とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。