兵庫県保険医協会

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第99回評議員会あいさつ

2022.05.15

 本日はお忙しい中、第99回評議員会にご出席いただきまして誠にありがとうございます。また、平素は評議員として協会の活動にご理解、ご協力を賜り厚くお礼申し上げます。最近の情勢と協会活動について若干述べさせて頂きます。

 新型コロナウイルス感染症は2021年度に入っても第4波後も流行を重ね、今年に入っての第6波ではこれまで以上に感染者数が急増し、今も収束のスピードは鈍化したままです。残念ながらゼロコロナという方針は望むべくもありません。
 予防接種の普及と治療法の進化に伴い重症の方、死亡される方は比較的少なくなっておりますが、いまだに毎日4万人以上の感染者が発生しゴールデンウィークの影響によりさらなる増加が懸念されるところであります。病床逼迫も小康状態とはいえ、現在も9000人以上の方々が入院中であり150人余りが重症とのことであります。一方で、宿泊療養あるいは自宅療養の方は30万人に達しております。
 緊急事態宣言やまん延防止措置も解除されウィズコロナの時代に入り、私たちの対応も平時の医療とコロナ対応の両立という新しいステージに入りつつあります。ただ今後の感染者数の絶対数の増加に伴う入院、重症死亡者数の増加と感染後の後遺症への準備が必要かと思います。執行部と致しましてはアンケート等により会員の意見を伺いながら刻々変化する情勢に合わせて、保険医の生活と権利を守るために、迅速に対応していきたいと思っております。
 さて、コロナ禍での医療状況を振り返りますと、受診抑制はいまだ回復せず平時の医療提供体制にはまだ遠いと言わざるを得ません。具体的な数字になりますけれどもコロナが蔓延した2020年度の医療費は、前年度比点4兆円の減少、マイナス3・2%であり、これは国民皆保険制度創設以来の減少ということになっております。去年2021年度の上半期のデータが出ております去年の4月から9月についてはこれはコロナ前の前前年度比で見ますと0.9%の伸びとなっております。これは稼働日数の影響を補正すると-0.2%となります。最近の医療費の伸びの長期的な傾向として毎年おおむね2%程度伸びてきたことから比べますと、依然として以前の水準にも届かず医療機関の経営状況は傷ついたままであります。
 私たちはコロナが拡大した当初から医療機関の経営に対しては医療機関の非営利性、公益性を踏まえ、すべての医療機関に対して、以前の診療報酬を基本としてその減少幅に応じた減収補てんを求めてきました。今後の新感染症に備えても患者・住民とともに地域医療の充実向上を目指すために、この方針は継続して行きたいというふうに考えております。

 さて、本年4月には診療報酬改定がございました。ご承知のように本年度の改定率は全体で0.9%のマイナス改定でした。コロナとたたかう医療機関、医療従事者そして国民の命を健康と守るという目的に対する政府の冷たい回答というふうに考えられます。また分配の強化として公的価格の見直しを行うとしていましたが、公的部門である医療従事者の給与の原資である診療報酬のマイナス改定は現行不一致と言わざるを得ません。
 とりわけ今回のリフィル処方箋の導入、それからオンライン診療の拡大が、医療費抑制が大きな目的の一つであり、また外来医療の機能分化を目的とする方向性、さらにはかかりつけ医の制度化は、定額払い人頭払いへの入り口となる危険性があります。
 一方で患者窓口負担増化。紹介状なしに病院を受診した場合の患者負担増加の拡大は、やはりフリーアクセスを阻害し特に経済的弱者にその弊害が及びます。さらに地域医療構想の実現、医師の働き方改革、医師偏在対策の推進が三位一体改革として進められています。三位一体改革はコロナ禍以前に推し進められていたら医療崩壊はさらに進んでいたというような意見もございます。
 これらの医療政策はつまるところ医療費抑制が目的であり、わが国の医療の特徴であるフリーアクセス、自由開業制、出来高払い、さらには国民皆保険制度そのものを課題ととらえて、効率化の掛け声の下、医療制度改悪のターゲットとしているというふうに考えられます 。医療は警察や消防と同じ社会的共通資本であり効率や採算性の追求は平時の余力を失い自然災害や今回の感染症の蔓延などのいわゆる有事の際には機能不全に陥ります。今こそこの方向を抜本的に見直す良い機会という風に考えます 。根本的には全国どの地域においても医療従事者数、病床数の確保と健全で安定した医療機関経営が可能となるような施策が必要と考えております。
 今年の夏には参議院選挙が予定されております。協会は不偏不党原則とし、これまでどおりの民主的議論と手続きを経て作り上げた具体的な要求の実現に向け、署名活動や幅広い国会各政党議員への働き方を強めていきたいと思います。ご理解ご協力のほどお願いします。ではこの後、具体的な会務報告と方針案、予算案の提案に移ります。疑問や批判の声は団体を成長させる良い機会と考えておりますので、先生方には忌憚ないご意見、活発な討議をお願いいたします。以上です。ご清聴ありがとうございました。

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