近畿各県の保険医協会や反核医師の会、民連でつくる近畿反核医師懇談会は8月23日、市民公開企画「”ESG投資”で核なき地球へ」を、大阪M&Dホールで開催。ZOOMを用いたオンラインでの参加も募り、会場とあわせて37人が参加した。
近畿反核医師懇談会では、昨年9月に京都で開催した「第30回反核医師のつどいin京都」で取り上げた、金融機関に核関連企業への投融資をやめさせる「Don’t bank on the bomb」の取り組みを広げようとキャンペーンを行っており、その一環として開催したもの。
キャンペーンリーダーである飯田哲夫・京都府保険医協会理事が冒頭あいさつ。核廃絶の実現のためにまだ日本で知名度の低いDon’t bank on the bombのキャンペーンを近畿から広げようと訴えた。
中央大学総合政策学部の目加田説子教授がオンラインで講演。目加田教授は、非人道兵器をなくす手段としての「ESG投資」について解説。日本では、「ESG投資」の「E(環境・Environment)」「S(社会・Social)」「G(企業統治・Governance)」のうち、「環境」はわかりやすくクローズアップされるが、「社会」は人権や非人道的兵器、多様性などさまざまな意味を含み幅広く抽象的であるために、共通認識に至っていないと指摘。
ESG投資の歴史として、80年代のスリーマイル島やチェルノブイリの原発事故、インド・ポパールの有毒ガス流出、アラスカ沖原油流出等の1国で封じ込められない大規模な環境汚染が起こり、持続的開発への関心が高まったことをきっかけに、金融機関の責任として国際社会で責任投資原則(PRI)が提唱されたなどと概括。PRIはESGの観点を投資に取り入れることを求めており、日本の企業でも署名が進んでいると紹介。
また、ESGの投資手法として、基準を満たさない特定の企業を投資対象から除外するネガティブスクリーニングの重要性を強調。実際、クラスター爆弾では、禁止条約発効後、関連企業への投融資の問題を国際NGO等が指摘し続けたことで、禁止条約に加盟していない国の企業でも、投融資がタブー視されるようになったと紹介。同様の取り組みが核兵器でも重要であり、市民一人ひとりが、自身のお金に対する責任を認識し、金融機関を評価することが大事だとした。
また、世界は米中や米ソ関係を見ると「新冷戦」と言うような状況にあり、軍事費がかつてなく増大しているが、新型コロナウイルス感染症拡大の状況のなか、必要なのは防衛費ではなく、医療や教育、環境等に予算を配分することだと強調した。
報告では、キャンペーン副リーダーの武村義人・兵庫県保険医協会副理事長が、同会が実施した「核兵器製造企業への融資に関する全国金融機関アンケート結果」を報告。全国の銀行・生命保険会社200社に核兵器製造企業への融資に関する公開質問状を送り、当日までに三菱UFJ・三井住友・みずほなどのメガバンクを含む23の金融機関から返信があり、核兵器関連の製造にかかわる企業への投融資に関して、「与信供与、投資共にしていない」が15行、「融資は核兵器に使われないことを確認した上で与信供与、投資は問題ない」が3行、「特別なポリシーはない」が1行となったなどと結果を報告した。
閉会挨拶で、キャンペーン副リーダーの中村新太郎・大阪歯科保険医協会理事が、同キャンペーンで作成したyoutube動画を紹介し、多くの人に広げようと訴えた。同副リーダーの武田勝文・大阪府保険医協会副理事長が司会を務めた。