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第30回反核医師のつどい
特別シンポジウム
「金融機関の核兵器製造企業への融資をやめさせよう」

公開日:2019/09/14

 「京都からアジアへ、そして世界へ 核兵器も原発も ICAN イカン 」と題して、2019年9月14日・15日に第30回反核医師のつどいが京都市内で開催された。特別シンポジウムでは、「金融機関の核兵器製造企業への融資を止めさせよう」をテーマに、ノーベル平和賞を受賞した国際NGO「ICAN」の中心メンバーであるスージー・スナイダーPAX核軍縮プログラムマネジャーらが講演。全国から医師、歯科医師、医学生ら270人が参加し、活発な議論が行われた。


 特別シンポジウムでは、まずスージー・スナイダーPAX核軍縮プログラムマネジャーが「Don’t Bank on the Bomb」と題して講演した。

 スナイダー氏はまず、金融機関150社について、核兵器関連企業との契約の有無、核兵器関連企業への投資の是非についてのマニュアルの有無などを調査し、契約が確実にあると認められた金融機関についての情報を公開したと説明した。日本の金融機関でも、三菱UFJ銀行など主要銀行の多くで核兵器関連企業への投資が確認されたとして、額とともに金融機関の一覧を示した。軍事産業は情勢の悪化でも株価が上昇するなどの点があり、投資を取りやめようとしていないのではないかと見解を示しつつ、投資額は全体からみるとほとんどが2~3%程度とごくわずかであり、投資を取りやめても金融機関の業績への影響は非常に限られているとした。

 金融機関に核兵器関連企業への投資を取りやめさせるには、政治に働きかける、地域住民と協力する、知り合いに呼びかける、株主総会などで企業に直接意見するなどさまざまな方法があるとしたが、その中でも個人でも簡単にできる方法として、金融機関の窓口で核兵器関連会社へ投資をしていないか尋ねることがあるとして、個人が取り組む上でのハードルは低いと紹介した。金融機関へ質問することで、金融機関職員の中でも、核兵器関連企業への投資を取りやめるべきか、議論を呼び起こすことができると解説。今回の調査を進めた中でも、核兵器関連企業への投資を取りやめる金融機関が出てきたと、運動の有効性について説明した。

 最後に協会・保団連に対して、核兵器企業への融資についての方針を示し、金融機関に対して、核兵器関連企業へ投資を行わないよう求めてほしいと要望した。

 続いて目加田説子中央大学教授が「クラスター爆弾と金融機関の責任」と題して講演した。

 目加田氏は、なぜクラスター爆弾についての取り組みを報告するのかについて説明。クラスター爆弾は広範囲に、無差別に、また多くが不発弾として対人地雷と同様な被害をもたらす非人道的兵器ある点で核兵器と共通するものであり、核兵器よりも一足早く2008年に「クラスター爆弾禁止条約」が成立し、日本を含む106カ国で製造や使用などが禁止されていると紹介した。このように禁止条約を元にして、非人道的兵器に反対する世論を盛り上げて、条約未加盟国にも放棄を促し、兵器の廃絶を目指すことは、核兵器においても同様だとした。

 次にクラスター爆弾製造企業への投融資の調査について説明した。この調査は2009年から実施しており、クラスター爆弾製造企業や関連企業への投融資が明らかになった金融機関を「不名誉リスト」、クラスター爆弾との関連を断ち切っている金融機関を「名誉リスト」と分類していると紹介。クラスター爆弾製造企業7社へ投融資を行った金融機関は最新の調査では88金融機関と前回調査の166から大幅に減少、一方で投資を断った名誉リストは42金融機関から48へと上昇傾向にあるとした。これらには、米国やロシアといった条約未加盟国の企業も名誉リストに名を連ねており、その背景には、条約により国際的にクラスター爆弾への投融資をしてはいけないとの世論が形成されていったことがあると、クラスター爆弾禁止条約の有効性を解説した。そして国家単位としても、クラスター爆弾製造企業への投融資が法律で禁止されている、もしくは条約により禁止されていると解釈する国々も増加しており、廃絶に向けた歩みを進めていると解説した。

 最後に日本の金融機関について、これまでは複数の金融機関でクラスター爆弾関連企業への投融資が確認されていたが、最新の調査では契約が確認されなかったと紹介。着実にクラスター爆弾関連企業への投資そのものが縮小傾向にあるとした。そして、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なうESG投資が世界的には投資額全体の3割にまで拡大していることなどを示し、核兵器関連企業であるかないかを投資の判断基準に加え、核兵器関連企業への投資を減少させることが、核廃絶に向けた有効な手段であると結論付けた。

 続いて、医師でPANW代表世話人の原和人先生が、「私たちのDon’t Bank on the Bomb」と題して、日本の主要銀行20行に対して、核兵器製造企業へ投融資しているかとのアンケートを実施し、メガバンクを含む3行から回答があったと紹介。質問では核兵器製造企業へ投資をしているか尋ねたが、殺戮兵器製造を目的とした事業への投融資は実施していないとの回答がなされるなど、核兵器製造企業への資金提供そのものが問題であるとの認識に立っていないことは残念であり、今後さらにキャンペーンを広めることが重要だとした。

 シンポジウムの後半では、フロアの参加者を交えての討論が行われ、特に金融機関の投資方針についてのアンケートに関連した質問などが多く出された。スージー・スナイダー氏は、金融機関に対して、核兵器関連企業への投資を禁止するとの投資方針を明確に打ち出した方が金融機関の信頼性が増すと主張すべきと回答するなどといった、活発な質疑が繰り広げられた。