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核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)発表(2020年4月16日)

公開日:2020/05/22

「Divestment and Nuclear Weapons」 の和訳 原文(クリック)

投資の撤収と核兵器

2020年4月

核爆発の危険性が、冷戦以後ではもっとも高くなっているのに、いまだに銀行や年金基金、投資会社は2017年から2019年の間に7480億ドルも核兵器の生産に投資している。かつてない人道的被害を全世界に与え得る兵器に、私たちの貯めたお金を使って。

金額は増加しているものの、機関投資家の実数は全体で減少している。持続可能性投資、倫理的投資のトレンドが金融のあり方を変えつつある。ますます多くの人々が、そしてその結果、金融機関自身が、態度を明確にすることが重要かつ緊急であると認識するようになってきている。

国連の核兵器禁止条約(TPNW)が発効目前であることも、核兵器生産企業の懐具合を痛めつけ、たたく、またとない好機である。市民社会が働きかけて、金融機関に、大量破壊兵器は持続可能性で責任ある賢明な投資行動とは相入れないものであるという新しい風土を受け入れさせ、核兵器を造る会社から投資を引き上げさせることが可能である。

背景

核保有9か国のほとんどは、核兵器の生産、維持、近代化を私企業に頼っている。金融機関は、これらの企業に投資することで、核保有国の核近代化プログラムに、そして新核軍拡競争に加担している。

金融機関と企業とのあらゆる金融上の貸付、株式の購入などの関係は、その企業の活動を容認していることを意味する。核兵器生産企業への投資は大量破壊兵器の生産はOKだという強力な信号を送ることになり、この兵器が使われる可能性を高めるのを手助けしている。

しかし、企業のある種の活動や生産を理由にした明確な排除は、問題の企業や他の投資家たちへ「容認できない」という強力な信号を送ることであり、その企業には金融上の圧力や重荷となる。

金融部門は、「核兵器と投資撤収」ということに関しては、今実行に移す時である。何年も前から、責任投資と考えられていたものに明らかなシフトが起きている。顧客や株主に最高の金銭的リターンを配当するのが、もはや会社の唯一の義務ではなくなっている。実存する脅威に直面するこの世界で、投資決定をする際に他の要素も考慮されなければならない。何兆ドルもの富が持続可能市場に切れ目なく注ぎこまれている中で、投資はうまくやるだけではなく、良い投資をしなければならない。

金融機関が、そのポリシーを変え、核兵器への投資を禁止すれば、核兵器産業とその共謀する政府の両者に圧力をかけ、核兵器に関する関係を終了させる新しい投資基準と規範に寄与することになる。

投資撤収は通常、事業の妨げに

地方公共団体、政府、金融機関を含む投資家による公表された排除は、違法な活動に関与する企業に悪の烙印を押す効果がある。これには児童労働からタバコ、公正な温暖化対策、アパルトヘイト時代の南ア政府など、投資の撤収が大きな影響を与え、政策や行動を変えさせた例がたくさんある。投資の撤収は、非人道的な生産物や行為に対して注意を喚起し汚名を着せることを促進させる。

企業はこの種の圧力を感じとっている証拠がある。例えば、米国はクラスター爆弾禁止条約には加盟しておらず、その条文には拘束されないが、米国に基盤を置くロッキードマーチン社はクラスター爆弾の運搬手段であるロケットやミサイルやその他の運搬手段の生産を中止し、今後そのような注文は拒絶すると発表した。ロッキードマーチン社は、今後生産しないので、投資家の投資先リストに再び掲載されることを望んでいると述べている。このことは、金融機関による圧力(そして、投資禁止の法制化などの政府による促進)が、ロッキードマーチン社のクラスター爆弾製造に関わらないという決断を後押ししたことを示している。

金融部門は、企業の決定に強力かつ継続的な影響を与えることができ、持続可能な発展に寄与でき、つまりは、市民が犠牲となる非人道兵器の生産を減少させることで命を救うことができる。

Don’t Bank on the Bombプロジェクト

オランダに基盤を置くICANのパートナーであるPAXが作成したDon’t Bank on the Bombリソースは、核兵器産業への投資の包括的な調査で、ICANの投資撤収キャンペーンの基礎となっている。

プロジェクトは、この問題に興味ある方用に3つの主要リソースを提供しており、活動家は金融機関に接触を始める前に、まず見ていただきたい:

  • どの企業が核兵器産業に関わっているか、唯一の公に利用可能なグローバルリスト
  • これらの生産企業から利益を得ている、金融機関のリスト。
    問題あるポリシーを持ち実践しているのは、どの銀行、投資ファンド、年金基金か。
  • 核兵器生産に関係する企業への融資を拒否している金融機関のプロファイル

物議を醸している兵器

すでに多くの金融機関は、持続可能性、責任ある投資家であるとの立場を明確にするために「物議を醸している兵器」への投資をしていない。しかし、「物議を醸している兵器」の普遍的な定義は存在せず、もっとも一般的なものは、生物兵器、化学兵器、クラスター爆弾、対人地雷のような問題ある兵器で、それを規制あるいは禁止する国際条約が存在するかどうかである。

核兵器に関しては、核不拡散条約(NPT)が、当該条約として挙げられることがある。しかし、この条約は、NPT条約で核兵器国とされる米、ロ、英、中、仏の5か国の核兵器を生産する企業への暗黙の承認と解釈されている。これら5か国は地球上の97%の貯蔵核兵器を保有しており、この定義は実際問題として意味をなさない。しかし、あらゆる核兵器を禁止する核兵器禁止条約は、発効間近で、他の物議を醸す兵器同様に法的規制がかかり、全金融機関、業界ウオチャー、監視する人、報道機関やすべての関係者は、この定義を更新しなければならない。このことは金融機関への核兵器へのかかわりを終わらせるための規範的圧力となる。

投資撤収の行動を

投資の撤収運動は、いくつかの始め方があり、活動のツールとして特別魅力的である。Don’t Bank on theBombリソースは金融機関の核兵器企業への投資を止めさせる組織的な活動の基礎である。取りうる行動には、銀行の代表に会う、本店や支店の前での抗議行動を組織する、市民の関心を高める、共闘する者を見つける、投資禁止の法制化を進めるなどがある。ツイッターなどのソーシャルメディアも使える。

PAXのDon’t Bank on the Bombチームは、「キャンペーン・ガイド」で、実際にできる、さまざまなかかわり方を上げており、その一部を次に紹介する。

私たちは金融機関に、何をするように求めているのか?

  • 核兵器生産企業への投資を否定する包括的なポリシーの作成。金融機関は、核兵器生産企業とのすべての金融関係を排除するポリシーを作るべきである。
  • 生産企業に、なぜ資金を引き上げるかを通知。金融機関は、生産企業に対して核兵器と関わっているのが理由で投資の終了を決定したことを通知すべきである。
  • 投資撤収政策をすべての活動で適用。金融機関は、その投資撤収政策をすべての活動に適用するべきである:普通銀行業務、投資銀行業務、資産管理など

市町村や地元の権威は何ができるか?

  • できることには、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の Cities Appealに参加すること;核兵器生産企業への投資禁止決議を採択すること;現在の都市のポートフォリオから核兵器生産企業の有価証券などの保有者でないか調査すること;そして投資撤収がなぜ重要であるかのメッセージを拡大することなどがある。
  • 物議を醸している武器生産会社と関わりがないことを明確にしたい都市や地方自治体は、責任投資政策を設定することができる。自治体によって、投資撤収にとることができる関与と方法のレベルが大きく異なる、そこで「Don’t Bank on the Bomb」は、いろいろな自治体向けに、さまざまなオプションのガイドを作っている( 参照:City Guide to Divestment(英))。
年金基金と政府系投資ファンドについて

年金基金や政府投資ファンドは、投資撤収の活動にとって、成果が得やすいと思われる。 公共あるいは民間の年金基金は人々の退職後のための貯金である。他方、政府投資ファンドは政府によって直接あるいは間接に所有・管理された資産のプールである。

これらのタイプの金融機関が特に重要なのは、時々、大口株主となり年次総会で大きな投票権を行使し、時には取締役会の1つ以上の席を得ることがあるからである。

これまでのところ、これらの金融機関は投資撤収活動に理解を示してくれやすいことが分かっており、すでにオランダ、スウェーデンとノルウェーで重要な成功を収めている。

通常、年金基金と政府投資ファンドをターゲットにする投資撤収の行動の仲間には労働組合が含まれる。労働組合は、時には、年金理事会や議会のメンバーとして直接年金の受益者代表となる。そこでは倫理的、持続可能な政府投資ファンド管理を確実にするよう働きかけることができる。

私ができること
  • 投資撤収キャンペーンは、市民の関心を呼び寄せる方法であり、人々にとって変化の創造に繋がっていると実感する方法である。
    ほとんどの人は銀行口座を持っているか、年金に加入している。だから、もし、その人の銀行や年金が核兵器生産企業に投資しているなら、その人も投資していることになる。
    投資撤収キャンペーンは、核廃絶のような難しい課題を、「自分のお金をどうするか」という個人が決定できるレベルに戻す方法である。
    1. あなたの金融機関や投資をチェックしよう。「Don’t Bank on the Bomb」プロジェクトのリストに載っているか?それは、「不名誉の殿堂(Hall of Shame)」に入っていないか?「次点(Runner-Up)」?「名誉の殿堂(]Hall of Fame)」?
    2. 接触しよう。接触するのは、地元のいつもの銀行に行ったり、ポートフォリオ担当者に電話したり、銀行アプリで質問したり、メールやSNSを使うのと同じくらい簡単である。核兵器を製造している企業をどのように取扱っているのかと質問を始めるのが、上手なやり方である。
    3. 話し合いをエスカレートしよう。 ICANや「Don’t Bank on the Bomb」チームとつながりを持ち、アプローチを深くする方法を見つけよう。その金融機関に働きかけている人がほかにいないか? 同じ町や地方にいないか? 顧客がもう一押しすれば完成するようなポリシーはないか?
    4. 「名誉の殿堂」に謝辞を述べ、「不名誉の殿堂」の名前を明かそう。 金融機関は、自らのイメージを非常に意識しており、自分(そして競争相手)がソーシャアルメディアで 何といわれているのか、入念に追跡している。ポジティブな賛同やツイッターやフィスブックでの大声の叫びは遠くまで拡散し得る。もちろん1通のツイートだけでポリシーを変えることはできないが、あなたの   より広いコミュニティやICANと共に一緒になって闘えば、確実に変化を生み出すことができる!
  • より詳細は「Individual Checklist」を

原文(クリック) (翻訳:近畿反核医師連絡会PT事務局)