医科2010.08.27 講演
プライマリケアのための関節のみかた 上肢編(中)―肘のみかた [臨床医学講座より]
西伊豆病院(静岡県)院長 仲田 和正先生講演
臨床医学講座「プライマリケアのための関節のみかた」(2月11日開催)の「上肢編(中)」を掲載する。
肘の触診のポイントは、3カ所ある。上腕骨外側上顆、内側上顆、肘頭である。肘を屈曲するとわかりやすい。図1を見ながら、場所を同定できるようにしてほしい。
手をついて肘の後方脱臼を起こすと、肘頭が後方へ飛び出し、この3カ所の位置関係が健側と違ってくる。肘の後ろが、凹になる。
テニス肘は、上腕骨外側上顆炎(図1-1)であり、同部に圧痛がある。手関節を背屈する筋は、すべて上腕骨外側上顆に付着し、この筋の使いすぎでここが痛くなる。テニス肘は、特にバックハンドストロークによって生ずる。テニス肘の誘発テストは、手首を背屈させこれに抵抗をかけると、外側上顆に痛みを訴える(図2)。外側上顆のすぐ前方に、橈骨小頭(図1-2)がある。手首を回転させると、ここも回転する。手をついて転倒すると、橈骨小頭骨折を起こすことがあり、ここに圧痛がある。
肘内障の整復は、橈骨小頭を近位へ押しつつ手掌を回内位から回外させつつ(手の甲を天井に向けた位置から手の平を患者の顔へ向けていく)、肘を屈曲していく。これでどうしても整復できなければ、回内位のまま肘を屈曲(手の甲を患者の顔に向ける)しても整復できることがある(図3)。
また、野球の投球の加速期に肘の外側に強い圧迫力がかかり、橈骨小頭と関節を作る上腕骨小頭(図1-3)の離断性骨軟骨炎を起こして遊離骨片(関節ねずみ)を生じ、急に肘が動かなくなることがある。次に、肘の内側の上腕骨内側上顆では、投球などでの手関節の掌屈により上腕骨内側上顆炎(図4)が起こる。手関節を屈曲する筋は、内側上顆に付着するからである。
肘頭(図1-5)は上腕三頭筋付着部であり、槍投げ肘(Javelin thrower's elbow)はここに圧痛がある。また、肘頭はブヨブヨした滑液包炎の好発部でもある。
小児で内・外側上顆の近位に圧痛があり、肘が腫脹している場合は上腕骨顆上骨折(図1-6)を考える。小児では、肘が過伸展するため、肘を伸展して手をつくと肘頭が上腕骨顆上部に衝突し、ここで骨折が起こるのである。肘関節で液貯留があると、肘の側面X線でfat pad signと言われるsignがみられ、大変役に立つ(図5)。穿刺は、肘頭の上で後方正中から行えばよい。