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学術・研究

医科2010.08.27 講演

ITを使った楽しい診療 画像ファイリングシステムで診療は変わるか? [診内研より]

広島市・中西内科院長 中西 重清先生講演

まとめ

 10年前より、診療記録として画像ファイリングシステム、かつ診療支援ソフトであるRS_Baseを使用している。当初は、レントゲン写真、心電図、胃内視鏡、エコーなどの静止画像を主体に保存を行っていた。その後、皮膚や咽頭部病変の保存を開始し、最近では静止画像のみならず可能なものは動画での保存を開始した。特に、診察時における主症状の動画撮影は有用である。
 これは、患者さん自身の過去における記録として役に立てるだけでなく、主治医自身の記憶にも残る。さらには医療技術の向上、医学生や研修医の医学教育にも利用できる。個人情報保護の観点から考えると厳重な管理が必要であるが、今後の診療の一つの方法と考える。

1、血液データ(図1・2)

 RS_Baseの最も臨床に役立つツールである。糖尿病患者さんの来院時に、体重・HbA1c・血糖が一瞬でグラフ化される機能は圧巻である。
 また、他院での採血も手動でデータファイルに入力でき、他の医療機関と自院のデータを結合できる。血液データのデジタル化は、その閲覧性、グラフ化による経過フォロー、薬歴との時系列チェック、BMI、eGFR、HOMA-Rなどの自動計算など、紙の伝票では入手できない重要な情報を与えてくれる。まさに、デジタル化ならではである。
 さらに、デジタル化は、ファイリングされた血液データが検索対象となるため、検査データの異常患者などの抽出、集計も非常に簡単に行うことも大きなメリットである。

2、レントゲン写真(図3・4)

 レントゲンのデジタル保存は、デジタルカメラ、フィルムデジタイザー(JPG保存)、DICOM保存(事実上のレントゲンの共通フォーマット)などがある。
 RS_Baseの使用施設では、CR(Computed Radiography)が以前に比べ安価になってきたこともあり、RS_Baseとの連携ソフト(RS_Receiver)によって、DICOM画像を保存している施設が増えている。
 当院では、フィルムにより診断し、DICOMのディスプレイ画像は、患者さんへの説明、過去画像の閲覧などに使用している。保存も自動であり、過去の画像からの連続性をワンタッチでディスプレイに再現でき、診療の効率化には必須のものとなっている。

3、超音波検査

 各社の超音波装置があるが、MO、DVD、オンラインなどで数社の機器からワンタッチ、あるいは自動ファイリングに対応している。これらの保存は、静止画はJPG画像、動画はAVIあるいはMPEGなどの圧縮動画フォーマットであることがほとんどである。

4、内視鏡(図5・6)

 内視鏡も数社存在するが、メジャー2社のMO、DVD、コンパクトフラッシュなどからのワンタッチファイリングが可能である。
 超音波検査および内視鏡は術中に診断する検査ではあるが、保存されたデータは、静止画の拡大、動画による再度の閲覧などにより、見逃しの有無などの確認にも役立つ。さらに、患者の検査歴に登録されることにより、いつ頃検査を行ったかの確認が容易で、再検査時期のチェックにも有用である。
 内視鏡、超音波のデジタル画像をファイリングすることにより、プリントしたデータのような劣化もなく、目的の画像への容易なアクセス、および検査間比較、検索など、デジタル化なしでは、なしえないことは非常に多い。

5、心電図

 心電図も数社存在するが、RS_Baseでは、各社の心電図閲覧ソフトを搭載している。心電図画像を、JPGやPDFのような固定されたものとして保存するのではなく、波形情報として保存しているため、波形の拡大、比較、測定など、自由自在となっている。

6、説明の画像

 患者さんへの説明の一つとしてパンフレットなどを使用するが、説明に使用するいろいろな画像をRS_Baseに登録しておくことにより、必要な時に、必要な画像を取り出すことができ、診療の効率化が図れる。
 説明した画像は、患者さんが希望されればプリントアウトしてお渡しする。

7、デジタルカメラによる所見

 診療内容のデジタル保存には、デジタルカメラは必須であると言える。皮膚の色調、形状の変化の撮影や、咽頭病変の撮影、動画による顔面や手足の運動機能異常、さらに動画とともに音声も保存され、デジタルカメラは診療のあらゆる場面で活躍する。

8、数値検査データのグラフ化

 もともとのデータは数値であるが、そのグラフ化が診断には必須のものがある。RS_Baseでは、この種の、スパイログラム、オージオグラム、ティンパノグラムなどからのデータを、連携ソフトを使用することによって自動ファイリングおよびグラフ化し、グラフも過去データとの比較が容易にできるようになっている。

9、紹介状

 紹介状は最近ワープロで書かれている場合も多いが、RS_Baseでも同様にキーボードによる入力で行う。ただ、患者情報、診療所情報は自動入力され、紹介先も登録したものから選択する。処方内容、患者保険情報、病名なども診療データからワンタッチで転記可能で、血液データや前回の紹介状内容のコピーも簡単にできる。
 さらに、紹介に必要な画像、たとえばレントゲン、エコー、内視鏡など、いろいろな画像を紹介状にはめ込むことが可能で、よりわかりやすい(カッコイイ?)紹介状が作成可能である。

10、レセプトコンピューター(レセコン)、電子カルテとの連携

 RS_Baseは画像ファイリング&診療支援ソフトであるために、レセコンあるいは電子カルテから患者情報を取得し、連係動作する必要がある。

11、医療情報の提供

 他院への医療情報の提供は、プリントした紹介状が主であるということは今も変わらない。紹介状程度であれば、暗号化してメール添付なども可能であるが、画像も含めた全データとなると、現状ではCDなどのメディアに一括出力したものを、紹介先で閲覧していただくことを想定した仕様になっている。

12、何でもござれ

 RS_Baseの目指すところは、電子カルテと連携しながらも、診療所内のすべての情報をそこに保持、閲覧、比較、検索、出力可能とすることである。
 画像ファイリングソフトであり、診療支援ソフトであり、ある意味、電子カルテのバックアップでもある。現在、約1700の診療所で利用されている。
RS_Baseの詳しい情報は、下記URLをご参照ください。
http://www.rsbase.net/
http://izumi.cside8.com/RSB_manual/Dr_Wada/index.html

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