医科2011.10.25 講演
復職支援における医療的アプローチと職場との連携(下) [第19回日常診療経験交流会演題より]
たつの市 室井整形外科・心療内科 高森 信岳
(前号からの続き)
職場が復職支援計画を作る
先述した疾患に対し、「手引き」では職場が復職支援計画を作ることとされ、想定されている。「手引き」では、従来型うつ病を対象にしており、それ以外の疾患では職場に過大な負担をかけていることが予測される。
また、職場検診でうつ状態を早期に把握する方向が求められており、潜在的な病的状態を発見することが考えられ、ますます負担が増加することが予測される。全ての職場が十分な社会資源を利用できるわけではなく、メンタルヘルスについては、どこの職場でもこれからという印象がある。
従来型うつ病と異なり、いわゆる「新型うつ病」の対応方法は、精神科の臨床においてもはっきりとしたコンセンサスは得られていない。そのため、個々のケース判断が求められ、精神科主治医との連携が重要視されている。
当院では、休職者の職場復帰にあたり、「手引き」をベースに精神科専門医と産業医の連携を行っている。精神保健福祉士、心理職、看護職がチームを組んで、集団認知療法、社会技能訓練(SST)、個別カウンセリング、ストレスケアとしてのEMDR、箱庭療法等を実施している(図1・2)。
これらをすべて産業医1人で実施するのは困難で、産業保健師、職場のメンタルヘルスの理解が必要である。それに付随して「手引き」では、職場が復職支援計画を作るとされている。そのため、多方面の職種の連携が必要である。
また、検診でうつ状態を把握することが求められるが、その後の個人情報を含めた職場での対応の限界がある。職場はリハビリ施設ではなく、雇用契約にもとづく成果が求められる。
うつ病・「新型うつ病」の復職支援の実例
実例として、以前に復職支援を行った職場では、従来型のうつ病の症例、気分変調症の症例が同時に発生していた。同じうつ状態を示しているが、職場に対する姿勢が異なるので、職場担当者が気付いた。
従来型のうつ病では、「手引き」通りの対応で問題なく対応できるが、新型うつ病では約束したことが守れず軽度のストレスで容易に行動抑制(朝起きられない、約束の時間に出かけられない)、軽度のストレスで不安発作を認めるため、復職困難で退職された。
職場の担当者も、「手引き」にもとづき経営陣と折衝を行ったが、理解が得られず無気力感を感じられ、転職された例もある。
以上、復職支援における医療的アプローチの実際について、紹介させていただいた。
〈参考文献〉
1)「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(厚生労働省、平成21年3月)
2)「復職支援における医療的アプローチの実際と課題」(高森信岳「月刊保団連」2009年11月NO.1015、P17~23)