医科2012.08.05 講演
兵庫県保険医協会第44回総会記念講演 カプセル内視鏡の有用性と今後の展望
慶應義塾大学医学部 内視鏡センター助教 細江 直樹先生講演
はじめに
小腸用カプセル内視鏡(CE:Capsule Endoscopy)は、2000年にIddanらによってNature誌上で発表され、世界中で幅広く使用されている。CEにより、これまで観察することができなかった小腸が観察でき、さまざまな小腸病変が明らかとなってきた。CE使用数は100万個を超え、小腸のみならず新たなカプセルとして、大腸用、食道用のカプセル内視鏡が欧米では開発されている。
本邦においては、2007年6月より原因不明消化管出血(OGIB:Obscure Gastrointestinal Bleeding)を適応とし、ギブンイメージング社よりPillCam SB®、2008年11月より国産としては初となるオリンパス社製カプセル内視鏡(Endocapsule®)が発売された。
小腸用CEおよび、今後の展望として他臓器用カプセル内視鏡(胃用、大腸用)について解説する。
小腸用カプセル内視鏡について
2007年に保険適応になって以来、本邦においてもOGIB症例に対し、カプセル内視鏡が積極的に使用されてきている。カプセル内視鏡は、図1に示すように11×26㎜の大きさをしたカプセル型の内視鏡である。1秒間に2枚ずつ写真を撮りながら、腸の蠕動にのって、口から肛門へと進んでいく。撮影した画像は、データーレコーダーと呼ばれる受信機に蓄積され、8時間の撮影後、コンピューターに画像をダウンロードし、図2に示すような画像解析用ソフトウェアで読影、解析を行う。
カプセル内視鏡はOGIBに対し、これまでのCTや造影検査より有用であると言われているが、滞留(カプセルが消化管に2週間以上留まっていること)と呼ばれる副作用が起こり得る。現在(2012年6月17日現在)のところ、保険適応は取得されていないが、パテンシーカプセルと呼ばれる開通性を事前に確認するダミーカプセルを使用することにより、事前に腸管の開通性を確認することで、さらに安全に小腸検査を行うことができるようになることが予想される。
胃用カプセル内視鏡について
広い空間である胃をカプセル内視鏡で見落としなく撮影するには、カプセルを誘導し、動かして観察する必要がある。そこで、シーメンス社とオリンパスメディカルシステムズ社によって、磁気誘導型の胃用のカプセル内視鏡(MGCE:magnetically guided capsule endoscope)が開発された。現在のところ発売はされていないが、フランスのニースにおいて第1回の臨床試験が行われた(Gastrointest Endosc. 2012 Feb;75(2):373-81.)。
この試験では、上部消化管内視鏡と、MGCEとの比較が行われ、良好な成績が得られている。
大腸用カプセル内視鏡について
大腸用カプセル内視鏡は、2006年に初めての臨床試験結果が報告され、現在では第2世代の大腸用カプセル内視鏡(PillCam Colon2®)が欧米で使用されている。本邦においては、現在のところ保険適応は得られていないが、われわれが行っている潰瘍性大腸炎患者に対する大腸用カプセル内視鏡の有用性の検討について報告する。現在のところ40例に対する検討が終了、大腸用カプセル内視鏡は、安全に使用でき、下部消化管内視鏡所見との高い相関結果が得られている。
おわりに
カプセル内視鏡の有用性と今後の展望について解説した。カプセル内視鏡は、患者に与える負担も少なく有用な検査であるといえる。今後、機器の改良、検査法の改良により、さらに有用な検査になることが期待できる。