兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

学術・研究

医科2015.05.23 講演

[保険診療のてびき] 各科に必要な漢方の知識(下) 第2章 各論

加古川市 松田内科・漢方クリニック  松田 康平先生講演

(前号からのつづき)
(1)内 科
 水滞と気虚が関与している場合、これらを治療することにより症状の改善が期待できます。(表1・表2)
(2)精神神経科
(パニック障害、鬱病、神経症、不眠症)
肝気鬱結 肝気の滞り:抑うつ、緊張、イライラなどの精神症状

加味逍遥散 山梔子 牡丹皮 白朮 茯苓 当帰 芍薬 甘草 柴胡 生姜 薄荷
 目標:比較的虚弱な人で疲れやすく、不安、不眠、イライラなどの神経症状
 適応:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害

抑肝散加陳皮半夏 白朮 茯苓 当帰 川芎 [くさかんむり+弓] 甘草 柴胡 釣藤鈎
 目標:比較的虚弱な人が精神過敏で興奮しやすく、不眠、イライラなどの症状
 適応:神経症、不眠症、小児の夜泣き、心血虚 心血の不足:不安感、悲哀感、不眠、多夢

帰脾湯  人参 黄耆 白朮 茯苓 当帰 大棗 甘草 生姜 木香 棗仁 竜眼 遠志
 目標:体力の低下、顔色不良、精神不安、心悸亢進、健忘、不眠
 適応:神経性胃炎、不安神経症、不眠症、抑うつ

甘麦大棗湯 大棗 甘草 小麦
 目標:体力中等度以下で神経過敏、不眠、悲観的、あくび
 適応:小児の夜泣き、神経症、不眠症、更年期障害

 精神疾患では上記以外に以下の処方も良く使われます。

半夏厚朴湯 生姜 半夏 茯苓 厚朴 蘇葉
 目標:気がふさぐ、動悸、不安

桂枝加竜骨牡蛎湯 桂皮 芍薬 生姜 大棗 甘草 竜骨 牡蛎
 目標:体質が虚弱な人で、痩せて顔色が悪く、不安や神経過敏

柴胡加竜骨牡蛎湯 柴胡 黄芩 [くさかんむり+今] 半夏 桂皮 茯苓 大棗 人参 竜骨 牡蛎
 目標:比較的体力がある人で、精神不安、不眠、イライラなどの神経症状

(3)耳鼻科
めまい めまいの原因に水滞と気虚が関与している場合があります。

半夏白朮天麻湯 回転性
生姜 半夏 茯苓 白朮 沢瀉 陳皮 人参 黄耆 麦芽 乾姜 黄柏 天麻

苓桂朮甘湯  体が揺れる
茯苓 白朮 桂皮 甘草

五苓散  浮腫を伴う
茯苓 白朮 沢瀉 猪苓 桂皮

補中益気湯  立ちくらみ
乾姜 陳皮 甘草 白朮 大棗 人参 黄耆 当帰 柴胡 升麻

(4)整形外科
腰痛その他の疼痛 疼痛に関しては水滞の他に冷えや瘀 [やまいだれ+於]血が関与する場合があります。

防已黄耆湯  浮腫んで痛む
防已 黄耆 生姜 白朮 大棗 甘草

桂枝加朮附湯  冷えて痛む
桂枝 芍薬 生姜 大棗 甘草+白朮 附子

疎経活血湯  血流が悪くて痛む
当帰 芍薬 川芎 [くさかんむり+弓] 地黄 桃仁 牡丹皮
蒼術 白朮 茯苓 生姜 陳皮 甘草 防風 防已 白芷 [くさかんむり+止] 姜活 威霊仙 竜胆

麻杏薏 [くさかんむり+意]甘湯  関節痛、筋肉痛
麻黄 杏仁 薏 [くさかんむり+意]苡仁 甘草

大防風湯  冷えのある虚弱者
黄耆 防風 人参 地黄 川芎 [くさかんむり+弓] 姜活 芍薬 甘草 杜仲 蒼術 牛膝 乾姜等

牛車腎気丸  陽虚(体力がなく、冷えている)
地黄 山茱萸 山薬 茯苓 牡丹皮 沢瀉 附子 桂皮+牛膝 車前子

(5)皮膚科
 湿疹、皮膚炎に対しては、解表、補血、利水、清熱、理血、補気の効能を持つ処方を組み合わせて使用します。

解表 皮膚の表面から邪を追い出す
桂枝湯 桂枝 芍薬 生姜 大棗 甘草

補血  皮膚を栄養する
芎 [くさかんむり+弓]帰膠艾湯  当帰 芍薬 川芎 [くさかんむり+弓] 地黄+甘草 阿膠 艾葉

利水  水腫を取る
猪苓湯 茯苓 猪苓 沢瀉 滑石 阿膠

清熱  炎症を抑える
消風散 柴胡清肝湯

理血  血流を良くする
桂枝茯苓丸加薏 [くさかんむり+意]苡仁(薏 [くさかんむり+意]苡仁:利水 健脾 排膿 清熱)

補気  免疫を高める
補中益気湯 小建中湯

(6)小児科
夜尿症  小建中湯(虚証の場合)
柴胡桂枝湯(元気な子の場合)

(7)産婦人科
月経不順、月経前症候群、月経困難症、子宮筋腫、子宮内膜症
 頻用処方の加味逍遥散、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散、女神散、桃核承気湯、温経湯以外に以下の処方も使用されます。

芎 [くさかんむり+弓]帰調血飲 血 当帰 川芎 [くさかんむり+弓] 地黄 牡丹皮 益母草
      水 茯苓 白朮 大棗 甘草 陳皮 乾姜
      気 香附子 烏薬

当帰湯 血 当帰 芍薬
    気 人参 黄耆 甘草 厚朴
    温 山椒 乾姜 桂皮 半夏

参考文献
『症例から学ぶ和漢診療学』寺澤捷年 著 医学書院
『漢方方剤ハンドブック』菅沼 栄 著 東洋学術出版社
『漢方のくすりの事典』鈴木 洋 著 医歯薬出版
『方剤心得十講』焦 樹徳 著 人民衛生出版社
(おわり)
(5月23日 加古川・高砂支部「漢方研究会」より)

1796_01.gif
※学術・研究内検索です。
歯科のページへ
2018年・研究会一覧PDF(医科)
2017年・研究会一覧PDF(医科)
2016年・研究会一覧PDF(医科)
2015年・研究会一覧PDF(医科)
2014年・研究会一覧PDF(医科)
2013年・研究会一覧PDF(医科)
2012年・研究会一覧PDF(医科)
2011年・研究会一覧PDF(医科)
2010年・研究会一覧PDF(医科)
2009年・研究会一覧PDF(医科)