兵庫県保険医協会

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学術・研究

医科2016.02.06 講演

[保険診療のてびき] 一般医の日常診療に役立つ皮膚科疾患の知識

洲本市・医療法人社団クラモト皮膚科  倉本  賢先生講演

はじめに
 皮膚科は一般医にとって、とっつきにくい科であります。漢字が難しい、病名が難しい、皮疹の区別がつきにくいなどがその理由に挙げられます。
 当院を受診する新患の内訳をみると、意外に他科を受診して完治せずに受診する患者さんが多いです。その理由として誤診はさておき外用剤の選択ミスによる場合が多いように感じられます。
適した剤形の選択
 外用剤は大きく軟膏剤とクリーム剤に分類できますが、軟膏剤とクリーム剤のように剤形が異なると、同一の主剤(主薬)を同じ濃度で含有していても、主剤の経皮吸収性が異なり、局所における薬物動態や臨床効果に差が出てきて同じようにはならない場合があります。
 各種皮疹の状態や外用部位に適した外用剤を求める医師や使用感の良さを求める患者さんのニーズなどにより、外用剤にはさまざまな剤形があります。例えば、クリーム剤には油中水型と水中油型の剤形がありますが、油中水型では水性成分より油性成分が多く、水滴の周りを油性成分が取り囲んでいるため、水中油型と比較して被覆効果に優れます。水中油型の剤形では油中水型と比較して水性成分が多く、外相が水であるため、べたつかず、使用感が良いのが特徴です。
 患者さんは塗りやすさを第一に考えますが、処方する医師は皮疹の状態により最適な剤形を選択しなければなりません。これを間違うと、診断が間違っていなくても治癒しない場合が生じてくるわけです。
ジェネリック医薬品の注意点
 外用剤は主剤と基剤で構成されますが、さまざまな剤形が存在する外用剤は、その基剤の構成に必要な添加物も異なり、外用剤を開発する場合に必要となる添加物が増えるほど、基剤構成や調製方法を最適化するために、高い製剤技術が要求されます。
 ここで問題になるのがジェネリック医薬品です。主剤が同じでも基剤が異なることにより、先ほど述べたように主薬の経皮吸収性が異なり、局所における薬物動態や臨床効果に差が出てくる可能性があることを医師は理解したうえで、責任を持って処方しなければならないと思います。
適した基剤の選択
 実際に外用剤を皮膚に適用する場合は、皮疹の状態によって基剤を選択する必要があります。皮疹が生じて皮膚欠損や分泌物があれば経皮吸収性が高まる可能性があるほか、基剤によっては刺激などの局所での副作用が起こる可能性があります。
 クリーム基剤のように皮膚透過性の高い基剤は、「びらん」や「潰瘍」のような皮膚欠損がある場合、経皮吸収性が高まる可能性があります。加えて、皮膚欠損がある場合は外的刺激を受けやすいため、基本的に軟膏基剤よりも添加物が多く、刺激性が高いクリーム基剤は一般的に適していません。
 皮膚の状態によって基剤を選択する上で、軟膏基剤は刺激性が低く、湿潤面でも乾燥面でも用いることができるため、最も適用しやすい基剤となります。ただし、べたつき感があり使用感が悪いといった欠点があります。このような皮膚の状態に応じた基剤の選択は、刺激性などの副作用の軽減や患者さんのコンプライアンスの向上を目的としています。ライフスタイルなど、個々の患者さんに合わせた使い分けが必要です。
外用剤使用法のまとめ
 外用剤は一般的に油脂性軟膏(軟膏剤)と乳剤性軟膏(クリーム剤)に分類されます。軟膏剤は適応が広く、湿潤した病変にも乾燥した病変にも適用できます。また皮膚への刺激が少なく、病変部を保護する効果もあり、痛みを緩和します。ただべたつき感があり露出部位に外用する場合、患者さんは抵抗を感じる場合があります。
 クリーム剤は水成分と油成分を混合するため、界面活性剤、防腐剤などのさまざまな基剤が添付されています。これにより水疱、膿疱、びらん、潰瘍などの湿潤病変に使用すると刺激感が出現し、病変の悪化につながることがあります。一般にクリーム剤は保湿剤としてのイメージが強いですが、乾燥病変への塗布により過乾燥になることがあります。
 結論から言うと、剤形に迷った場合は軟膏剤をまず選択するのが好ましいと思われます。
(2月6日、淡路支部日常診療勉強会より。小見出しは編集部)
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