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学術・研究

医科2017.03.11 講演

胸部X線ルネッサンス(上)[診内研より495]

滋賀医科大学医学部附属病院 呼吸器内科副科長  長尾 大志先生講演

はじめに
 私が学んできた胸部X線写真、胸部CT画像の奥深さ、面白さを、少しでも多くの方に知っていただきたい、と考え、ブログ「やさしイイ呼吸器教室」でご紹介してきました。それが役に立つ、というお声が多くあり、書籍化したものが書籍版『やさしイイ胸部画像教室』です。
 このたびこちらでお話する機会を頂きましたので、できる限りそのエッセンスをお伝えしたいと思います。タイトルは、もう一度胸部X線写真を見直すという意味で「ルネッサンス」といたしました。
 今さら胸部X線写真を見直すの?と思われるかもしれません。胸部単純写真読影なんて、基本中の基本。でも、本当に「きちんと」読影できているか、確認する機会はなかなかありません。
 また、今はCT時代、と思われる方も多いかと思いますが、気軽に・繰り返し・すぐに撮れる、という意味では胸部X線写真に軍配が上がります。
 そこで今回の具体的な目標は「陰影の存在を見逃さない」。「○○(場所)に○○影」をきちんと指摘し、かつ、一歩踏み込んだ読影ができるように、必要な情報と方法をご紹介します。
シルエットサインと、その意味合い
 シルエットサイン陽性は、もちろん異常影が肺のどの場所(葉)にあるかを表す情報ですが、実はそもそも「異常影が存在する」ことを教えてくれる、大変重要な情報です。
 シルエットサインを確認するのは、心陰影・大動脈・横隔膜・そして毛髪線です。胸部X線写真を読影する際には、これらをしっかりと辿ることをお勧めします(図1)。
 心臓は身体の前寄りにあり、右中葉、左舌区と接しています。心臓のラインが消えているときには、心臓に接する右中葉ないし左舌区に異常影がある、と考えられます。逆に、心臓に重なる陰影があるのに、線が消えていない、となれば、それはその陰影が心臓より後ろ、すなわち下葉にあることを意味します。
 どれだけ濃い陰影があっても、シルエットサインは正確に表れます。また、一見異常影がなさそうに見えるところであっても、線が消えている(シルエットサイン陽性)ときには、そこに接した異常影がある、と考える根拠になります(図2)。
 例えば、昨今高齢化社会を反映して増加している誤嚥性肺炎は、下葉・底区に好発します。高齢者は肺炎徴候に乏しく、診断が困難であることも少なくありません。しかも左下葉の肺炎では心陰影に肺炎像が隠れて不明瞭となることもしばしば経験されます。それでも、下行大動脈や左横隔膜のシルエットサインが陽性であれば、左下葉に陰影がある、ということが分かるのです(図3)。
 また、慢性咳嗽の原因として知られる副鼻腔気管支症候群では、中葉・舌区の病変が特徴的ですが、それは心陰影がシルエットサイン陽性となることから確認されます。
(次号に続く。3月11日、診療内容向上研究会より)

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