医科2018.02.04 講演
日常診療で使える整形知識(12)
整形外科的外傷学各論(3)
[臨床医学講座より](2018年2月4日)
静岡県・西伊豆健育会病院 院長 仲田 和正先生講演
(前号からのつづき)外脛骨
後脛骨筋が足の内側の舟状骨に付着するが、時に舟状骨の内側に外脛骨という余分な骨があり後脛骨筋がここに付着することがある。ここで付着部炎を起こすことがある(図1)。踵骨骨折
特に高所から飛び降りた時、踵をコンクリート面などに打ち付けると踵骨のすぐ上の距骨のくさび状になった部分が踵骨に打ち込まれ踵骨骨折が起こる(図2)。踵を痛がり踵をついて歩けない。また次第に踵が腫れてくる。土踏まずの部分に紫色の皮下出血が出てくるのも特徴であるが、これは数日経たないと出てこない(図3)。飛び降りた際、踵を地面についた後、体を前屈しつつ尻餅をつくことが多いがこのとき、脊椎圧迫骨折が起こりやすい(図4)。だいたい、第12胸椎か第1腰椎の骨折が一番多いが、これは体を前屈したとき、この辺りに最も強い力がかかるからである。だから踵骨骨折を見たら、必ず脊椎を軽く叩いてみて圧迫骨折の有無を確認せよ。
踵骨のX線は側面と軸写のみでなくアントンセン撮影(X線技師に言えば分かる)を撮り、距骨と踵骨の関節面が保たれているか否かを確認せよ。
治療:ギプス固定、キルシュナー鋼線固定、プレート固定など
足関節捻挫
足関節は外くるぶし(腓骨外果)の方が内くるぶし(脛骨内果)より下にある。従って、足関節の捻挫は内返しの捻挫になることが多い。足関節捻挫では特に外側の四つの場所に注目せよ(図5)。(1)外果のすぐ前(ATF:前距腓靱帯)および (2)外果の後下方(CF:踵腓靱帯)の腫れや圧痛(押さえると痛がること)はないか。この二つが切れて足関節の不安定性を起こすことが多い。二つが切れた場合、ギプスを巻いたり手術したりすることもある。
(3)外果の2〜3㎝前方(二分靱帯)の圧痛。手術することはない。
(4)第5中足骨の基部(第5趾の外側を後方にたどった時一番飛び出して触れるところ)
ここには短腓骨筋腱が付着するが内返しの捻挫でこの腱により第5中足骨の基部が引かれて剥離骨折が起こることがある(ゲタを履いて起こったのでゲタ骨折という)。ギプス固定したり手術したりする。
捻挫で靱帯損傷でなく内果や外果の骨折を起こすこともある。内果、外果自体の圧痛の有無も確認せよ。
捻挫治療の4原則:RICE
R:rest 局所の安静
I:ice 冷却
C:compression 圧迫(包帯を巻くこと)
E:elevation 挙上
以上はすべて痛みと腫れを防ぐためである。
アキレス腱断裂・下腿三頭筋挫傷
アキレス腱は下腿三頭筋が連続して移行したもの。この筋肉が収縮している時に無理矢理引き伸ばされる時、(eccentric contraction:例えばしゃがんだ格好から突然勢い良く立ち上がった時など)に断裂しやすい。断裂の有無はアキレス腱を触診してみると陥没を触れる。正常人で力を抜かせてふくらはぎの真ん中あたりをギュッとつかむと足が底屈する。アキレス腱が断裂しているとふくらはぎをつかんでも足が動かない(Thompsonのテスト、図6)。アキレス腱が切れていても自分で足を底屈することはできる。しかし、つま先立ちはできない。
断裂部が一番接近するのは膝を曲げ足を底屈した格好である(腓腹筋は二関節筋であり、大腿骨から起始し膝関節、足関節を横切って踵骨に付着する)。だからこの形で副木を当てると良い(おそ松くんの中に出てくるイヤミのシェーの形、図7)。
アキレス腱断裂でなくそれより上の下腿三頭筋の断裂を起こすこともある。いわゆる肉離れである。
★筋肉を痛めやすい運動
バーベルを握り肘を屈曲する運動を上腕二頭筋のconcentric contractionという。
肘を途中まで屈曲して動かさないのをisometric contraction(等尺性収縮)という。
屈曲位からバーベルを持ったままゆっくり肘を伸展していくのをeccentric contractionという。このeccentric contractionが最も筋肉を痛めやすい運動である。