医科2018.10.13 講演
心電図ハンター 〜脚ブロックの虚血判断〜
[診内研より506](2018年10月13日)
札幌徳洲会病院 救急科 増井 伸高先生講演
脚ブロックで虚血判断は難しい
左脚ブロック(以下LBBB)は心筋梗塞のなかで4〜8%とまれではない。心臓カテーテル検査をうける患者の11%〜22%はLBBBである。しかしLBBBの時に心電図から虚血変化を判断するのは難しく、過去にはできないとされていた。どのLBBBで心臓カテーテル検査をするかは心電図評価以外の胸痛の症状や、血液検査、リスクの重症度などでなされていた。
一方でLBBBでも過去の心電図との比較で評価が可能となる場合がある。自院の心電図はもちろん、他院通院患者が夜間休日に受診しても電話すればFAXで送信してもらえるので、過去の心電図との比較を習慣にするべきだ。
それでも比較した心電図で全く変化がない場合もある。その場合は心電図評価にこだわりすぎず、高感度トロポニンなど他の検査やリスク評価をして虚血判断をするべきである。心電図という一つの物差しだけで無理に評価することはない。
虚血の判定ルール
一方で1995年にSgarbossaはLBBBの虚血の判定ルール"Sgarbossa's Criteria"を報告した(図1)。このルールを使えば心電図だけでLBBBの虚血診断が可能であり、追試でも特異度が非常に高いことが証明された。センセーショナルなこのCriteriaだが実は問題点があった。それは感度が低いので除外に使えないということだ。さらに実臨床ではSgarbossa's Criteriaが適応となる症例は非常に限られており、LBBBの心電図症例は虚血が"ない"とは言い切れずベットサイドでは困ることは多い。その後にSmithらがLBBBの虚血評価における感度が高いSmith's Criteriaを報告した。割り算しないといけないので少々煩雑に感じるが、高感度で除外にも有用であり実際やってみる価値はある(図2)。
ところがSmith's Criteriaの感度は91%である。相手が心筋梗塞であるため十分な値とは言えず、このCriteriaを使用しつつも適時リスク評価や心電図以外の検査も利用して虚血を評価すべきである(図3)。
RBBBは通常対応
さて、右脚ブロック(以下RBBB)と虚血変化についてはLBBBと違い、文献は少なく教科書にもあまり書いてない。しかし、それはいつものやり方でST評価ができるからである。特別な対応が必要なのはLBBB。RBBBは通常対応でかまわない。まとめ
・LBBBで虚血を疑うならまずSgarbossa's criteria。当てはまれば循環器コンサルト・Sgarbossa's criteriaが使えないならSmith's Criteriaを利用。かなり除外は可能だが他検査も含めて総合評価が必要
・RBBBはいつも通り心電図評価をしてかまわない
(10月13日、診療内容向上研究会より、小見出しは編集部)