兵庫県保険医協会

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学術・研究

医科2020.10.10 講演

[保険診療のてびき]
見える漢方薬(陰陽五行学説)(上)
-新型コロナウイルスの発熱外来の3例-(2020年10月10日)

東大阪市・小阪医院  曹  桂植先生講演

はじめに
 小生は処方証、処方生薬の性質、作用形態を図示し、可視化できないものかとずっと考えていた。最近、陰陽五行学説の勉強をしていて、この学説の中に"五臓の生理的な巡り"が存在することが判明した。この"五臓の生理的な巡り(五臓循環図)"を使用して処方証(病態)の可視化、処方生薬の作用形態の可視化を試みた。
 (1)処方証の可視化は臓器の寒性を青色、温性を赤色、および、五臓の気機失調を点線として五臓循環図に示し、処方証の病態として表現した。(2)処方生薬の作用形態は処方証の異常な五臓循環図に対して、複数の生薬を帰経、性味に従って図示すると、五臓の巡りの改善を図っていることを視覚的に認識できる。
陰陽五行学説と表裏五臓循環図
 陰陽五行学説の陰陽五行図は従来から臨床の実際には即しておらず、陰陽五行図を使って診断し、治療に生かすことは困難と言われている(図1)。しかし、見方によっては陰陽五行図は巧妙に考えられたシステムと思われる。五臓の各臓器の気や血の"大過(過剰)"、"不及(不足)"のバランスを取るための自動調節システムである。
 "五臓の生理的な巡り(五臓循環図)"は反相克の流れである。気血の生成、全身全細胞への配送は五臓の働きにより行われ、いずれも重要な臓器である。肝の働きは特異で、気血の生成、配送のいずれにも関わっている。五臓循環図は肝の副交感神経様作用、交感神経様作用を加味して作成した。さらに表層、裏層(消化管)を加えた図を作成し、表裏五臓循環図とした(図2)。
三焦の模式化と表裏五臓循環図
 三焦は解剖生理学的には間質液スペースにほぼ一致している。間質液スペースは全身、全細胞と毛細血管網との間に存在し、栄養物質、酸素、ホルモンなどを供給、代謝産物を回収する通路となっている。毛細血管網は括約筋(自律神経)によりコントロールされている。間質液スペースは体重の15%にもおよぶ巨大な生理機能機構であり、定まった形はみられない(図3)。
 少陽三焦経は厥陰肝経とは表裏の関係にあり、脾の運化昇清、肺の宣散粛降、腎の納期、心の推動、肝の発揚疏泄作用などとの共調により気、津液を全身、全細胞に巡らせ、五臓、六腑の生理的機能を発揮させる。表層には表三焦を経由して衛気、津液を配送して汗を不感蒸発している。裏層には裏三焦を経由して唾液、胃液、胆汁、膵液、腸液を分泌して、一部の津液を大腸から回収している(図4)。

(つづく)

図1 陰陽五行図
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図2 表裏五臓循環図
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図3 間質液スペースと毛細血管網
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図4 表層五臓循環図と三焦
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