医科2021.09.11 講演
心疾患の身体所見:巡り辿る臨床路(下)
[診内研より526] (2021年9月11日)
大阪府守口市 パナソニック健康保険組合 松下記念病院 循環器内科 川﨑 達也先生講演
(前号からのつづき)
藁稭 長者
本書籍Practical Handbook of Phonocardiography:50 Case Studies with Embedded Audio and Videoは、50例の心音図とその解説(英語)から成ります。電子書籍の特徴を最大限に生かすため、全例で実際の心音と心エコー図をリンクしています。心音のトリビアなども含み、すべてのイラストも自ら手がけました。売り上げはともかく、自力で出版できた充実感にしばし浸ることができました。そしてこの書籍が、次の大きな一歩につながりました。あの循環器Physical Examination講習会(毎年1月に神戸ポートピアホテルで開催:2021年はWEB)からお誘いがかかったのです。身体所見の匠が集う夏の合宿への招待です。同講習会が立ち上がって間もない頃に、生徒として参加させていただいたことがあります。しかしあまりのレベルの高さに打ちのめされた記憶しかありません。その講習会の講師陣が集う合宿への参加は身分不相応と考え、丁重にお断りいたしました。しかし翌年もお誘いいただいたので、恐る恐る訪ねてみました。新参者をやさしく迎えていただき、またたくさんのことを教えてもらいました。本当に感謝しかありません。そして2017年に同講習会で発表する機会も与えていただきました。あの舞台に自分が講師として立つなんて夢にも思いませんでした。その後は現在に至るまで、すばらしい達人の先生方とご一緒させていただいています。
好機到来
身体所見の未来は明るいと思っています。風前の灯となったフィジカルの業を守ろうとしている熱い仲間がいるからです。そしてデジタル技術の発達も大きな追い風です。ポケットに忍ばせたスマートフォンでさまざまな身体所見をいつでもどこでも参照できます。個人的にも複数のアプリを公開しています。例えば、心音を聴く「ポケット心音」や循環器領域の身体所見を診る「ポケット・フィジカル」です(図3:いずれもApp StoreまたはGoogle Playから無料ダウンロード可能/ウェブ上でも可動)。個々が経験した身体所見をウェブ上で共有して議論することも容易になりました。例えば「心臓フィジカル広場」(https://physical-examination.blogspot.com)です(図4)。これらのコンテンツが皆さまのお役に立てば開発者・管理者としては望外の喜びです。身体所見をもう一度思い出して、明日からの日常臨床に応用してみてください。診療がきっと楽しくなるはずです。そして関連書籍の精読や講習会への参加などで技を磨き、自らが匠となって次世代に業を伝えていってください。
(2021年9月11日、診療内容向上研究会より)