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学術・研究

歯科2011.03.25 講演

閉塞性睡眠時無呼吸症候群における口腔内装置治療(上) -医科・歯科の連携ー [歯科定例研究会より]

神戸市北区・井尻歯科クリニック院長 井尻 博和先生講演

はじめに

 2004年4月から、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS:Obstructive Sleep Apnea Syndrome-以下OSAS)において、口腔内装置(OA:Oral Appliance-以下OA)による歯科的治療が保険適応として認められた。
 当クリニックでは、2005年8月から医科と連携してOSASにおけるOA治療に取り組んでいる。
 OAの種類は、(1)上顎型OA、(2)上下分離型OA、(3)ヒンジ型OA、(4)上下一体型OAなどに分類されるが、最も効果が高いと思われる上下一体型OAで一定の治療効果を得ているので、ここに当クリニックでの治療方法とその効果、また医科との連携について述べようと思う。
 上下一体型のOAの中でも、鼻詰まりが起こりやすい方には空気の通り道を確保した開放型(図(1)、(2))を、鼻詰まりの起きない方には閉鎖型(図(3)、(4))を作製している。
 約7~8割の方は、開放型を望まれている。開放型と閉鎖型の治療効果の差は感じないが、開放型は閉鎖型に比べて強度が劣るためにやや壊れやすい。

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OAの作製方法

 一般的な作製手順は、以下の通りである。
 (1)歯型を採る(図(5))。
 (2)咬合を決定。ジョージ・ゲージ(下顎前方移動量計測器、図(6))にて、中心咬合位から最大前方位の50~70%の間に、下顎の前方移動の位置を決める。ロールワッテとシリコン材(商品名:グリーンバイトアップル)で、その位置の咬合を採得する(図(7))。
 (3)加熱加圧成形器(商品名:エルコプレス、図(8))に歯型を挿入して、ハードシート厚さ1㎜(成分:ポリエチレンテレフタレート、図(9))で成形。
 (4)歯の最大豊隆部を越えてトリミング(維持を得るため、図(10))。咬合器に咬合採得されたシリコン材にて歯牙模型を装着後、トリミングしたシートを模型に戻し透明なレジン(商品名:オーソクリスタル)で筆盛り、圧力釜で気泡除去、仕上げ研磨して完成。
 (5)口腔内で試適、装着(2回目の来院時)。

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当クリニックでのSAS患者

 2005年8月から現在まで、18の医療機関から164人の紹介患者が来院。
 男女別では、男性134人、女性30人で、男女比は4対1である。年齢別には、60歳代をピークに50歳代、40歳代と分布している。
 重症度別では、中等症をピークに重症、軽症と分布している。

OAのいびきに関する効果

 OAのいびきに関する効果は、患者への問診での聞き取り調査となる。基本的には、ベッドパートナーに、今までのいびきに比べてどうなのかを聞いてもらっている。
 一人で寝ている場合は、別室で寝ている家族の方にのぞいて聞いてもらう。誰もいない場合は、録音してもらう。録音もできない場合は、簡易SPO2検査を勧めている。
 OAを装着した129人で、いびきに関してあまり効果のなかった患者(いびきが50%以下にならなかった)は、14人であった。115人は、いびきが50%以下に軽減している。OAはいびきに関して、約90%で効果が認められている。

PSG検査による評価

 表は、OA評価のためのPSG検査を受けた21人の患者の評価である。
 AHIが15以下で、変化率が50%以下を著効とするならば、軽症から重症まで含めて21人中11人が著効している。
 逆に、AIかあるいはAHIのいずれかが悪化した患者は、3人あった。
(次号に続く)

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