歯科2011.04.25 講演
明日から始める歯科往診(実践編)-コンセプトと器具の選定-
[第19回日常診療経験交流会演題より]
伊丹市・かわむら歯科 川村 雅之(歯科医師)
はじめに
全国的に患者減が言われる中、ニーズも保険点数的にものびてきているのが、歯科往診です。
ただ、往診キットは高価で、またセミナーも概して高く、敷居の高いものとなっています。果たして一般開業医にとって、実践しにくい分野なのでしょうか?
高い往診器具は必要ですか?
・オサダ「ポータブルユニットデイジー」 1,700,000円。
・ポータブルバキューム 286,000円。
・キング工業㈱「ポータブルユニットかれん」820,000円~1,595,900円。
※備品を含めると、200万円ほどかかります。
高いセミナーは必要ですか?
・日本訪問歯科医学会の「訪問歯科スタートアップセミナー」は48,000円。
・訪問歯科コンサルティングの「歯科訪問マニュアル」は49,800円。イージーパックサポート2の初期導入費用315,000円。
・兵庫県保険医協会の会員懇談会では、実際に訪問歯科診療を行っている先生と無料で意見交換ができます。
どのようなコンセプト?
どのようなコンセプトの歯科往診を始めるか。考え方次第で、敷居は低くなります。
当院では、往診依頼の73.3%が義歯関連です。外科処置や大がかりなクラウンブリッジ補綴などは、患者の全身状態から断念せざるを得ない場合もあります。
まずは、義歯の作製、修理、調整に限った歯科往診から始めてみてはどうでしょうか?
器具の選定
義歯に限れば、ポータブルのエンジン以外は、ほぼ診療室のものでこと足ります(図)。
ナカニシの「ビバ・メート3」が定価116,000円。バー類は診療室の流用。印象材やトレー、咬合紙、即時重合レジンも診療室の流用です。これで7割以上カバーできます。
自信がついたら歯牙切削やスケーリング
ナカニシの5倍速、ライトなし外部注水型は、定価104,000円。安価でタービンより安全です。コントラは、診療室で以前に使っていたものを流用しています。
スケーリングも可能です。水の供給は農薬噴霧器を使います。電気は、もちろん家庭用でOK。農薬噴霧器「ミスターオート」は実売1,600円。吸引に必要なバキュームは、1,980円の掃除機をビンに繋いで自作しました。ホース類は1m、160円から500円。それに、バキュームのL字管2本。しめて3,000円程度。
あとは労力と騒音少々。プライスレス。でも無理はしないでください。
宣伝
まずは院内に「歯科往診いたします」などの掲示を行います。高齢の患者などとの会話に、「来られなくなったら、家まで治しに行ってあげるから」と言っておきます。本人でなくても、家族や隣人を紹介してくれます。
電柱看板や広告も有効ですが、費用など考慮が必要です。ケアマネや老健施設などと仲良くするのも依頼増加につながります。
まとめ
歯科往診は、やり方によっては低コスト低リスクで始められます。
どうせ、基礎疾患のある患者に道具も限られる往診先で、診療室と同じことはできないと開き直り、「せめて食べる楽しみだけは守ってあげよう」と取り組めば、感謝もされるし保険点数も上がります。ぜひトライしてください。地域によりますが、毎月5万点くらいは算定が可能です。