歯科2011.05.15 講演
明日から始める歯科往診(事務編)-文書発行と医療・介護保険請求-
[第19回日常診療経験交流会演題より]
伊丹市・かわむら歯科 川村 雅之(歯科医師)、川村 美保(薬剤師)
はじめに
2010年の点数改定で最も上がった項目の一つが訪問診療関連でしょう。
初診料は名目上では上がったものの、実際運用してみれば、ほぼ横ばい状態です。外科関連や新技術は一般の歯科医院にはほとんど関係がなく、絵に描いた餅にすぎません。院内技工も、やっていない所がほとんどだと思います。
前回の実践編で述べましたように、歯科往診のハードルは低くすることが可能です。私たちにとって、経営戦略的には歯科往診ではないでしょうか。
今改定で改善した部分
(1)診療時間30分以上が、20分以上に緩和されました。
(2)急性対応加算が、歯科訪問診療料なしで算定可能になりました。
(3)初診でなく初回に、急性対応加算1回目が算定可能になりました。
複雑な文書記載
歯科往診に二の足を踏む理由の一つが、院内より一見複雑に見える提供文書記載です。
しかし、基礎疾患など歯科往診に活用すべき情報の項目ばかりです。少し勉強してみましょう(図1)。
実際、歯管などに比べ評価も高く、慣れれば短時間で聞き取れます。しかも、次回の文書提供時に内容が変わらないのが普通です。
介護保険関連
在宅やグループホームなど、指導料関係は介護保険での算定になります。
医療保険で算定すると、会計検査院からの通報で呼び出されます。かといって算定しなければ、経営戦略上大いに問題になります。項目は限られますし、記載も意外と簡単なので、ぜひトライしてみてください。
実際の明細書の記載
情報提供の有無で、500単位と400単位となる居宅療養管理指導I。居宅と施設で、350単位と300単位となる衛生士等居宅療養。回数と合計、それぞれの年月日。要支援の場合は名称に予防と付いてコード番号も頭の31が34に変わります。
請求額集計欄も、居宅療養管理指導31と予防居宅療養管理指導34と実日数。保険90、公費がある場合は公費100と書けばOKです(図2)。
実際の請求書の記載
普通は保険部分の記載のみです。単位数、費用合計と請求額、負担額を書きます。公費の場合は、公費請求も記載します(図3)。
まとめ
実際の訪問診療では、診療室レベルは無理なのだと開き直らなければ、最初の一歩が踏み出せないし、疲れて挫折します。
提供文書もできる範囲から始めれば、やがて厚労省推奨のものが物足りなくなってきます。
介護保険請求実務もほとんど一定で、ストレスもなくなります。患者さんからは感謝されますし、点数的な評価も高いので、ぜひ始められることをおすすめします。