兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

学術・研究

歯科2014.09.25 講演

歯科定例研究会より 最新のデジタルテクノロジーを用いた歯科矯正治療

北海道医療大学口腔構造・機能発育学系歯科矯正学分野 准教授  林  一夫先生講演

背 景
 1998年に設立されたOraMetrix社(本社:テキサス州リチャードソン・アメリカ)により、SureSmileシステムは開発された。SureSmileシステムは、最も正確で綿密な診断、治療方針の決定、患者のモニタリング、カスタム矯正治療を提供できる革新的なDigital技術であり、2004年以降、アメリカ、カナダ、オーストラリアの400人以上の矯正専門医により用いられ、100,000人以上の患者が治療された。
 ここ日本では、2010年より導入が開始され、現在までのところ7施設で用いられ、年間200症例以上がSureSmileシステムにより治療されている。今後は、日本での導入施設が10施設を超えると予想され、さらなる発展が期待される。
SureSmileによる治療の流れ(図1)
1.最初に患者の模型をスキャニングすることにより診断用の三次元(3D)モデルを構築する。3Dモデルでシミュレーションすることにより、治療目標を三次元で明確化する。
2.ブラケットを装着し、レべリング後、再度、口腔内のスキャンを行うことでブラケットと歯の正確な位置が再現される。また、セットアップモデルを再構築することで、より現実的な個々の患者に対応した治療目標が設定できる。
3.このセットアップの情報に基づいて、SureSmile wireをデザインし、ロボットで正確にワイヤーにベンドを行い個々の患者に適用する。
4.治療結果の評価を、3Dモデルの重ね合わせを用いることにより行う。
診断用3Dモデル(図2)
 基本的に、SureSmileシステムでは、2種類の診断用の3Dモデルを用いることが可能である。一つはCBCTデータによるモデルで、骨、歯根の状態を再構築することができる。もう一つは口腔内を直接計測可能な光学スキャナー(OraScanner)によるデータによるモデルで、歯冠および歯肉の状態が再現される。CBCTが設置されていない施設では、OraScannerのみで運用している。
治療用3Dモデル(図3)
 治療用3Dモデルとシミュレーションの一例を示す。顎骨、歯根、歯冠そして歯肉の情報が仮想モデルとして正確に再現されているところに注目してほしい。今までの矯正治療では、顎の骨に対する歯根の位置を正確に評価することができず、矯正科医の経験によるところが大きかった。しかしながら、治療用3Dモデルを用いることによって、歯根を正確に顎の骨の中に位置づけるような治療計画の立案が可能となる。つまり、骨に対する最適な歯の位置のシミュレーションが可能となり、生体機能を考慮した治療計画を立てることができる。
まとめ
 SureSmileシステムに関する有効性の評価は、今後いろいろな角度から行われていくことが予想される。SureSmileシステムを用いることによって、より良い矯正治療を多くの患者様に届けるには、多くの矯正歯科医からこの全く新しいフィロソフィに対する支持を得る必要があり、そのためには学術的な観点から客観的にその有効性が証明されなければならない。日本においても同様の取り組みを行うべく、体制を整え研究を進めている。
 今回報告させていただいた最新のデジタル矯正治療およびそのフィロソフィは、われわれが進むべき道であり、必ずや矯正治療をより良いものに変革できることを信じてやまない。

1762_7.jpg
※学術・研究内検索です。
医科のページへ
2018年・研究会一覧PDF(歯科)
2017年・研究会一覧PDF(歯科)
2016年・研究会一覧PDF(歯科)
2015年・研究会一覧PDF(歯科)
2014年・研究会一覧PDF(歯科)
2013年・研究会一覧PDF(歯科)
2012年・研究会一覧PDF(歯科)
2011年・研究会一覧PDF(歯科)
2010年・研究会一覧PDF(歯科)
2009年・研究会一覧PDF(歯科)