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学術・研究

歯科2019.01.20 講演

歯科定例研究会より
話す、飲む、食べられる口づくり

神奈川県茅ヶ崎市・村田歯科医院 院長 黒岩 恭子先生講演

口腔ケアで多職種から問い合わせ
 日本の高齢社会は数年前から超重度化してきているため、歯科医療従事者はじめ各々の病院、施設や居宅等でかかわっている多職種が、飲食できなくなった方へのアプローチに困難を極めている状況が増えてきました。
 そのような中で地域包括ケアとしての多職種での連携がよりいっそう重要になってきました。
 まず歯科医療従事者は、口腔の環境を整える「飲食できる口づくり」が必要となります。
 現に多職種からの問い合わせでは、
1.口をなかなか開けてくれない方の口腔ケア方法・正しいブラッシング法が知りたい
2.吸引器がない状況で、排痰できない方の口腔ケアをどうしたらよいか困ったことがある
3.私の母はパーキンソンと誤嚥性肺炎でした。亡くなる前は点滴(水分)のみでした。痰がゴロゴロすると吸引していましたが、なかなか引けず、本人もされると思うと口を開けず大変でした。タッピング等したり、体位交換をゴロゴロとしたりしていました。鼻腔からはなおさら嫌がっていました
4.むせ込みが激しい方への食事介助方法と誤嚥への不安。排痰の促し方法には、どのような方法が良いのかを学びたいです
5.食事介助中に誤嚥させてしまわないか。口腔ケアが適切にできているか。排痰がスムーズにできない方の対応について
6.誤嚥性肺炎、横紋筋融解症にて入院。全粥ソフト(2)とろみ付にて食事開始。円背あり。食事時以外は常に開口。全身硬い。口腔乾燥(+)。覚醒悪いと痰絡み(+)。37度の発熱(+)。口腔ケア時は拒絶が強く開口しない。経口摂取維持に向けてアプローチ方法の御指導お願いします
等々が寄せられました。
 具体的な回答としては、実践で結果を出すためにはまず、「くるリーナブラシシリーズ」(図1、表1)を使っていただきたいと思います。
くるリーナブラシの活用を
 くるリーナブラシシリーズは1999年7月に発売して以来、全国で成果と結果が出ている口腔ケアの物品の一つとして、各々の現場で喜ばれています。数分で簡単にかつ効果が上がり、継続した口腔ケアの展開となること間違いなしです。口腔ケアをしながら口腔リハビリがくるリーナブラシシリーズでできるので、動かなかった、もしくは動きにくかった口腔の機能を引き出し、運動機能と感覚機能を引き出し、ついて自浄作用に繋げることができるので、シンプルで一石二鳥の口腔ケアとなります。ぜひ試してみてください。

くるリーナブラシシリーズの特長
(1)柄付きくるリーナブラシ
・毛先がやわらかいので、歯はあるが口腔内が過敏な方、開口拒否がある方に最適
(2)柄付きくるリーナブラシミニ
・くるリーナブラシよりもブラシ部分が小さいので、わずかな隙間からでも歯を磨くことができます
(3)吸引くるリーナブラシミニ・(4)吸引くるリーナブラシ
・口腔内に痰や唾液が多く貯留している方に対し、吸引しながらケアすることが可能です
(5)モアブラシ
・口腔ケアを行いながら同時に口腔リハビリができる、一石二鳥の手技が行えます
・水分を吸い取りながら磨けるので、口腔ケアの時にむせてしまう方に最適。歯がない方や舌苔がある方、出血しやすい方に適しています。口の奥やのどに貯留している唾液や痰を巻き取るのに良いです
(6)ミニモアブラシ
・モアブラシより小さいので、開口拒否がある方や口が小さい方に適しています。また低年齢の障害児にも活用範囲が広いです

気をつけることとヒント
(1)口腔ケアの前に鼻毛を切り、鼻くそを取り、保湿剤を鼻腔に塗布しておくと口腔ケア中に鼻腔から咽頭に保湿剤が湿潤していくので、口腔乾燥して咽頭も乾燥し動かなくなっている口腔が動きやすくなります。
(2)くるリーナブラシシリーズで清掃する前に、表情筋や舌のストレッチを行ってから口腔ケアをすると、感覚を感じやすく過敏で緊張した筋肉が弛緩し、くるリーナブラシシリーズを口腔内に挿入しやすくなります(図2)。
(3)呼吸疾患、心臓疾患のある方は口腔ケアの途中で、息継ぎのつもりでその都度くるリーナブラシシリーズを口腔外に取り出し、数秒休み、呼吸を整え再度口腔内にくるリーナブラシシリーズを挿入し、きれいになるまで行います。
(4)重症の場合は酸素濃度、血圧、脈拍を測りながら行うと安全、安心です。
(5)口腔内が乾燥していると、くるリーナブラシシリーズを水分で潤しただけでは口腔内で操作をするとすべりが悪く、粘膜がひきつってきしみ、擦過傷となり痛みを伴う場合があるので、このような時には保湿剤を用いたほうが優しい口腔ケアができます。
 くるリーナブラシシリーズの使用方法として、今回はその中でも口腔ケアを行いながら口腔リハビリが行える、モアブラシの操作方法をご紹介します。
モアブラシで口腔リハビリ
1.口の周りや唇にモアブラシを当てる。はじめは、声掛けしながらポンポンとモアブラシを当てる
2.ほっぺにブラシを入れて大きく伸ばす。左右、大きく5回ずつ
目的:頬の筋肉を柔らかくすることで物がしっかり噛める
3.歯と唇の間にブラシを入れて押す。どちらも5回程、押し返してくるのをイメージしながら
目的:反射で下唇を上げてきたり、上唇を下げてきたりするのを引き出し、口唇閉鎖を促したい
4.歯と唇の間のこの4ヵ所にブラシを差し込み、10数えながら微振動
目的:口の周りの筋肉をやわらげ口の動きをスムーズにしたい
5.舌全体を押す。耕すように10回ほど押す
目的:舌に食べ物をうまく乗せる能力を引き出す。食べ物を確実に受け止めて、送り込むことができる元気な舌をつくるため
6.舌の横を左右5回ずつ押す
目的:舌を使って歯に乗せて噛む動作ができるようにする。食べ物を上手に歯の上に持っていける舌をつくり、丸のみにせずに食べられるようにする
7.舌の裏からめくり上げる。舌の横から裏にブラシを入れ、舌をめくり上げてさらにストレッチ
目的:飲み物や食べ物を舌から落とさないため
8.舌の奥から手前に押しながら伸ばす
目的:食べ物を送り込む能力を引き出したい。口に入った物を喉に送り込む力をつけるため、波打つような舌の動きができるようにしたい
9.舌先をブラシで上から下へ5回くらい押す。押し返してもらうイメージで
目的:反射を使って舌先が上唇の方に行くことで、口蓋に貼り付いた食物をうまく丸めて送り込めるように。喋ることも引き出したい
10.舌先の裏から舌を上に上げる。ブラシで下から上へ5回位
目的:飲み物や食べ物を飲み込みやすくする。舌打ちができるようにする
(1月20日、歯科定例研究会より)

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