歯科2023.05.28 講演
歯科定例研究会より
美しい義歯調整-簡単で効率的なコツ-(2023年5月28日)
さとう歯科医院・昭和大学名誉教授 佐藤 裕二先生講演
高齢者の義歯治療においては、必ずしも教科書的な治療原則が正解とは限らない。100点の診療をめざすのではなく、半分の時間で90点をめざすことも必要である。残存歯数は確かに増えているが、寿命の延長に伴い、義歯患者(特にパーシャルデンチャー)は減ってはおらず、逆に難症例は増えている。このような状況で、義歯治療も、新製ではなく、適切な調整・修理・リラインが重要となっている。義歯治療を効率的に行うための「教科書に書いてないコツ」が重要である。「簡単で効率的な適合・咬合の検査・調整」に関しては、システマティックな診察検査が重要である(表)。ここで重要なのは、「適合」の検査・調整が終わってから、咬合の検査を行うことである1)。そうでないと、義歯粘膜面を削って咬合調整を行うことになってしまう。また咬合検査は、左右同時に赤い咬合紙で側方運動を記録し、青い咬合紙でタッピングの記録を行うのが最も見やすい2)。
「装着・撤去がしやすい義歯」「パーシャルデンチャーの維持力の的確な調整」などに関しては、維持力が強すぎたり弱すぎたりする理由を理解した上で、適切な調整が必要である。「維持力が強いからクラスプを外側に曲げる」「維持力が弱いからクラスプを内側に曲げる」といった安易な調整は成功しない。
また、義歯が良くなったことを患者さんに理解してもらうためには、口腔機能低下症の検査が重要である。七つの検査を適切に行い、効率的な管理が重要である。義歯の効果を検証するとともに、義歯装着だけでは回復しない口腔機能に関してはトレーニング指導が重要になる。
この際には、当講座で開発した「口腔機能低下症の検査結果から口腔機能年齢(お口年齢)を算出する手法」が効果的である3)。図に口腔機能年齢を用いた患者指導例を示す。単に基準値を下回っているかではなく、年相応かどうかが重要である。
高齢者の残存歯数は増加しているが、高齢者の絶対数の増加により、まだまだ義歯治療のニーズは高い。しかも、う蝕、歯周病、全身の疾患、口腔機能の低下を抱えた難症例が増えてくるので、いかに効率よく義歯調整ができるかがポイントであるが、義歯のみでは回復しない口腔機能の低下もあわせて対応することが重要である。
1)佐藤裕二,教科書にのせたい義歯診療のコツ,永末書店,東京,2012.
2)Sato Y, et al:An alternative procedure for discrimination of contacts in centric occlusion and lateral excursion, J Prosthet Dent 88:644-645, 2002.
3)佐藤裕二ほか,口腔機能低下症の検査結果を用いた口腔機能年齢(お口年齢)の提案,昭和学士会誌82:104-111,2022.
(5月28日、歯科定例研究会より)
表 義歯の診察・検査手順
図 93歳男性の口腔機能年齢を用いた指導例