歯科2024.02.23 講演
[保険診療のてびき]
歯科診療で注意したい感染制御・医療安全・高齢者の心身の特徴(2024年2月23日)
兵庫医科大学 医学部 歯科口腔外科学講座 教授 野口 一馬先生講演
2024年2月23日に歯科診療報酬の「歯科外来診療環境体制加算」「在宅医療支援歯科診療所」「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」「院内感染防止対策に係る施設基準」を算定するための研修を担当させていただきました。本稿ではサマリーを掲載する機会をいただきましたので、内容を一部紹介いたします。
「歯科診療室における院内感染対策」では従来から私たちが行ってきた「血液媒介感染症」に対する院内感染対策に加えてCOVID-19など新興・再興感染症に対する「エアロゾル感染症」対策が必要であると述べました。エアロゾル感染症対策としてN-95マスクという新しいPPE(個人防護具)が増えたのですが、どのような場面で装着するのか、PPEの着脱法、新しい院内感染対策における問題点を考えてみました(図1)。
またCOVID-19罹患後症状、特に味覚障害に対する対処法とCOVID-19関連疾患として真菌由来の歯性上顎洞炎の報告が出ていることを説明しました。
「歯科診療室における医療安全対策」のパートでは、今、医療安全の世界で強く推奨されている心理的安全性を紹介した上で(図2)、患者の高齢化が進む中、抗血栓薬を服用されている患者様が多くなってまいりましたので、歯科医院で出血リスクがある患者様をどうピックアップするか? 抗血栓薬服用中の患者様の抜歯をどのように考えるか? 止血はどのようにするか? 困ったらどうするか?、という内容で「抗血栓療法服用患者の抜歯に関するガイドライン」の考え方を復習してみました(図3・4)。
後半は「高齢者の心身の特徴」と「在宅医療・介護」におけるトピックスをお話ししました。
特に認知症対策では認知症への移行率が高く、また認知症の前段階と考えられているパーキンソン病の患者様を歯科治療で支える必要性と手法を確認しました(図5)。
「歯科疾患の重症化予防に資する継続的な管理」では、う蝕(エナメル質初期う蝕を含む)の重症化予防と継続管理、歯周病の重症化予防と継続管理について、さらに高齢者に生じる根面う蝕に対する対処法を説明しました。
2024年6月より施行される診療報酬改定では新しく「小児の心身の特性」について研修を行う指針が出ております。研究会時点で詳細は明らかではありませんでしたが、厚生労働省のホームページに掲載されている資料を用いて小児口腔機能管理の考え方と内容について説明させていただいた後、現在小児で近い将来、大きな問題になるであろう小児の睡眠時無呼吸症候群について解説いたしました。
3時間半で十分な内容をお話しすることはできなかったと思いますが、とても熱心にご聴講いただきましたこと、お礼申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。
(2024年2月23日、歯科医療安全管理対策研究会より)
図1 選ぶ(兵庫医科大学の場合)
図2 Googleに学ぶ医療安全!
図3 抗血栓薬とは...抗凝固薬と抗血小板薬の両者を総称しています!
図4 ワルファリン使用患者の抜歯の実際
図5 なぜパーキンソン病の患者に歯科治療が必要なのか?