兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2010年7月25日(1629号) ピックアップニュース

燭心

 林覚乗老師のお話を聴く機会があった。刑務所や警察、看護学校で講話をされ、命の電話にもかかわられ、全国で年間250回以上講演をされている老師のお話は多岐にわたり面白かった▼中でも涙が出そうになったのが、少年と若い女教師の物語。小学校5年で担任した少年は服装も汚く勉強に身が入らない。たまりかねた女教師は少年の過去の担任記録を調べてみた。小学1年の記録では優しくて思いやりがあり、勉強もよくでき将来が楽しみ。2年では母親が病気で看病している。3年では母親の病気が重く構ってもらえない。4年では母親が亡くなり父親に暴力をふるわれている。これを読んだ女教師は、職員室で自分が放課後仕事をしている横で少年に予習復習を毎日させた▼そんな日が続いたクリスマス、少年が小さい箱を胸に押し付けて帰っていった。開けてみると小さな香水瓶。少年の母親のだと直感した女教師は1、2滴つけて少年の家へ。荒れ果てた部屋で留守番をしていた少年が、お母さんの匂いがすると胸に飛び込んできて泣いた。6年では担任を離れたが少年は毎年欠かさずカードを送ってくれ、奨学金を得て母のような人々を助けたいと医師になった。今年送られてきたカードには、「結婚します。母の席に座ってください」とあった▼「生まれてきてくれてありがとう」と言って育てれば「育ててくれてありがとう」と言う大人になり少年非行は起こらないのでは、とのご意見だった(水)
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