兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2010年8月25日(1631号) ピックアップニュース

主張 〝新高齢者医療制度〟にもの申す

 民主党はつい先日の野党時代、75歳で医療を差別する後期高齢者医療制度を「うば捨て山」と批判し、制度の即時廃止を公約に掲げた。その公約はいまだ果たされず、8月20日に高齢者医療制度改革会議は新制度の「中間とりまとめ」を公表した。
 新制度の骨子は、加入者の大部分を国民健康保険に戻すとしながら、財政は別勘定にし、保険料は医療費の1割にするもの。これは国民の批判を受け止めず、逆に制度の本質を温存し、「名称」の問題にすりかえようというものだ。
 民主党には、現行制度が高齢者の〝医療費の抑制〟を目的としていたこと自体が間違っていたという反省がなく、それどころか「制度には利点もあった」と高齢者に受診抑制を求める姿勢を引き継ぎ、新制度を設計しようとしている。これでは現行制度と比べ、よりましどころか、より悪質な医療制度となる可能性が高い。
 現行制度は、国民の大運動で保険料軽減措置が実現し、高齢者の負担割合は1割ではなく「実質約7%程度」と厚労省は算出している。新制度が1割負担に戻せば、軽減措置はすべて外され、負担増に対する高齢者の怒りが再び噴出することは避けられないだろう。
 民主党は昨年、老健制度に戻す法案に賛成しながら、実は当初から、現行制度には二つ利点があると指摘していた。ひとつは高齢者にも〝痛み〟を感じてもらうため医療費の1割を保険料として負担させること。もうひとつは、都道府県を単位とする広域連合が運営することである。
 「中間とりまとめ」でもこの〝広域化〟が盛り込まれている。しかも高齢者医療制度だけでなく、市町村国保をも県単位に広域化する狙いだ。この〝広域化〟で国保財政は改善するというが、財政悪化の原因は、かつて収入の5割を占めていた国庫負担が半分に削減されたことにある。弱者同士が集まっても財政が改善されるはずはない。
 実際に大阪府では国保保険料の統一に向けた論議が開始されたが、中身は市町からの一般会計繰入や自治体独自の減免制度の廃止である。このような広域化は、社会保障としての国保を、戦前の〝助け合い〟国保に復古させるものだ。憲法25条の観点からも見過ごすことはできない。


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