2010年9月25日(1634号) ピックアップニュース
主張
核兵器廃絶
期待高まる、日本の医師・医学者の役割
今年5月、NPT(核不拡散条約)再検討会議がニューヨークで開かれ、「核兵器のない世界」の実現が確認された。核保有国が核兵器を廃絶するための「明確な約束」がうたわれ、中東地域非核化の2012年会議の招集が決まるなど大きな前進がみられた。世界の反核運動と核兵器廃絶の国際世論が、核兵器全面禁止のための交渉を推し進めた形となった。
第19回IPPNW(核戦争防止国際医師会議)世界大会は、こうした情勢をふまえて、8月25日から30日にスイスのバーゼルで開催された。
日本は、唯一の核被爆国である。われわれ日本の医師・医学者の発言は大変重く、積極的に議論に参加して、核廃絶の具体化を進めることが重要であると考えられる。
残念なことに、日本政府はNPT再検討会議で何らイニシアティブを発揮することなく、アメリカの「核の傘」を容認する立場での対応に終始していた。だからこそ、われわれ日本の医師・医学者は、今回のIPPNW世界大会で重要な役割を果たさなければならない立場にあった。
世界大会では、全体会議・分科会・ポスターセッションなどに分かれて会議が進められた。分科会では、日本の代表から原爆症認定問題が提案され、裁判の経過報告、争点、認定後の行政の対応の遅延などが報告されている。ポスターセッションは、被爆国日本の姿を素直に伝える内容であり、被爆者を診療し続けた医師の記録は、訪れた諸外国の医師の胸を打つものであった。
核兵器保有国、特に米国は、核兵器廃絶の具体的取り組みに反対している。それは、まさに人類滅亡の危険な綱渡りの選択であり、悪循環の繰り返しである。
次の第20回IPPNW世界大会は、広島で行われる。この重要な大会で、日本の医師・医学者は「核兵器廃絶」のための明確な役割を果たさなければならない。ひとりでも多くの医師の参加を期待する。