2011年1月25日(1644号) ピックアップニュース
燭心
古代中国の春秋時代、狙公(そこう)が手飼いの猿にトチの実を与えるのに、朝に三つ、暮れに四つとしたら猿は少ないと怒り、それなら朝四つ、暮れに三つとしたら大いに喜んだという有名な故事(朝三暮四)がある▼政府は子ども手当てをいずれ2万6千円まで増額すると言って福祉政策を喧伝しているが、他方、扶養家族控除や配偶者控除の廃止も同時に行う予定らしい。控除の廃止は増税そのものだ。政府は巧妙にも、マスコミを通して増税の「ぞ」の字も言わせない。言えば内閣支持率はさらに下がり、選挙で野党に負けると思っているらしい。2千数百年前の古代中国の愚民政策そのものだ。成熟した議会制民主主義国において、このようなたぶらかしは通用しない▼法人税率を5%下げて、その不足分を消費税増税で補う政策も、国民の信を得られない。選挙で選ばれた政治家は、主権者である国民に対して謙虚になるべきだ。国民の所得が増えていない(企業の内部留保金は激増している)この時期に消費税を上げて、新たな財源を得たら、あたかも砂糖に群がるアリのように、各方面から分捕り合戦が始まり、本当に国民にとって必要な福祉や医療にのみ使われるかどうか怪しい▼スウェーデンは消費税率25%だが、200年間戦争をしていない。国民は国家を信用している。菅総理が「国民の生活が第一」という民主党の標語を背景に国民の理解を求めるテレビ報道の姿が、妙に白々しく見える今日この頃だ(鼻)