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兵庫保険医新聞

2011年1月25日(1644号) ピックアップニュース

阪神・淡路大震災16年 各地でメモリアル行事

 震災から16年となる1月17日にあわせ、各地で行われたメモリアル行事のもようを掲載する。

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「説明を聞く川西理事(左3人目)
ながたウォーク
再開発事業の問題点を実感

 火災により、震災で最も大きな被害を受けた長田区のまちを歩く「16年目=ひと・まち・くらし歩いて・みて・語ろう ながたメモリアルウォーク」が、1月17日に震災復興長田の会の主催で開催され、80人が参加した。協会から川西敏雄理事が参加した。
 長田区では震災後、「創造的復興」として、住民の意向を無視した区画整理や、巨大な商業ビル・マンションを建設する再開発事業が進められた。
 しかし、ビルには空き床が目立ち、震災から16年が経った今でも、人口・事業所数・年間販売額いずれも、震災前に比べて大きく落ち込んだままだ。
 参加者は、森本真神戸市会議員らから説明を受けながら、約1時間かけて再開発地区を歩いた。
 新長田駅南地区の商業ビルは、地下1階にほとんど店舗がなく、シャッターばかりが目立った。
 「鉄人28号」モニュメントや「三国志なりきり隊」など、商店街活性化をめざす取り組みも見学した。
 ウォークの後、阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議の岩田伸彦事務局長が、16年間を振り返り講演。被災者生活再建支援法の実現と拡充など、運動で被災者支援の制度が改善されてきたと強調し、「阪神・淡路大震災被災者に救済が遡及されないのが一番悔しい。さらに運動を進めたい」と語った。
 参加者は「もともと長田のまちに合わない再開発だった」「改善を求めて声をあげ続けるしかない」などと感想を交流し、ハコモノ型の再開発事業の問題と復興のあり方について考えた。

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犠牲者を追悼して鐘をつく落合副議長(上)と
口分田理事(下)
市民追悼のつどい
希望の鐘に16年の思いをこめる

 氷点下の17日早朝、神戸の街を一望する「天国にいちばん近い」諏訪山公園ビーナスブリッジで早朝追悼のつどいが行われ、100人が震災の起こった5時46分に黙祷した。落合愛子協会副議長もかけつけて、犠牲者の冥福を祈った。
 松平晃氏のトランペット演奏後、毎年山梨から追悼のつどいにかけつけている石原顕正ら僧侶による声明(しょうみょう)のなか、犠牲者の冥福を祈って参加者一人ひとりが「神戸・希望の鐘」をついた。
 同日午前には、同実行委員会主催の市民追悼のつどいが、神戸市婦人会館で行われ、140人が参加した。
 NPO法人アースの僧侶らが17回忌法要・平安祈願修法を行い、口分田勝協会理事をはじめ参加者全員で「神戸・希望の鐘」をついた。追悼の詩の朗読や心の復興を願った歌、筑前琵琶演奏なども行われた。
 主催者を代表してあいさつした安田秋成氏(元県議)は、仮設住宅の中で始まった手作りの追悼式の成り立ちを紹介。「震災から16年たったが、遺族にとっては昨日のことのように鮮明。震災犠牲者の上に今日の私たちがいる。力の限りこの追悼式を続けたい」と思いを語った。

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「追い出しは3度目の居住地コミュニティーの破壊」と安田氏
震災復興シンポジウム
借上住宅追い出し 入居者の意向を尊重し契約更新を

 兵庫県や神戸市などが阪神・淡路大震災の被災者向けに民間から借り上げた復興住宅の返還期限(20年間)をめぐる問題について、県震災復興研究センターは15日、県私学会館で大震災16年シンポジウム「今なぜ、『借上公営住宅』からの追い出しか~安心して住み続けられる復興住宅を」を開催。県内外から市民ら120人以上が参加した。
 基調報告した出口俊一・同センター事務局長は、「県や市は『20年間』という返還期限を議論の大前提にしているが、被災者の実態にあわせて協議しなおすべき」「民間やUR(独立行政法人都市再生機構)などほとんどの貸主も県や神戸市との契約延長を望んでいる」として、入居者の意向を聞いた上で、必要な人には契約を更新すべきだと主張した。
 パネルディスカッションでは、借上住宅居住者らが実態報告した。兵庫区の民間借上住宅に住む安田秋成氏は、「病気の居住者は、この10年間でなじみの医者や医療機関をつくってきた。転居でこれが断ち切られるのは非常に怖い。『死ね』と言われているのと同じことだ」と訴えた。
 ポートアイランドのUR借上住宅入居者で震災障害者でもある岡田一男氏は、「入居時は期限の話を聞かなかった。今になって『20年』と聞いて驚いた。できればこのまま住み続けたい」と、思いを語った。
 県弁護士会災害復興等支援委員会委員長の津久井進弁護士は、「20年間という契約を県・市が民間と更新することは法的には何の問題もない。入居者の事情を考慮せず住み替えが強制されれば典型的な『復興災害』になる」と述べた。
 ディスカッションではその他、田中康夫衆院議員(新党日本)や粟原富夫神戸市議(新社会)らも発言、県への要望を行うとした。
 シンポには、借上公営住宅を抱える宝塚市の中川智子市長からメッセージが寄せられた。

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