兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2011年1月25日(1644号) ピックアップニュース

阪神・淡路大震災から16年 生活再建に新たな壁 復興住宅から被災者に追い出し迫る

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神戸市の借上公営住宅。20年の
契約期限が迫り、入居者は市から退去を
迫られている(1月17日、神戸市長田区)

 6434人の命を奪った阪神・淡路大震災から16年。震災後の復興事業で、壊れた街並みは美しく整備されたが、被災者のくらしには震災が影を落とし続けている。兵庫県・神戸市が、被災者向けに民間から借り上げた復興住宅の入居者らに対し、20年間の入居期限を前に転居を迫っていることが大きな問題となっている。16年となる1月17日を中心に、県下各地で被害者追悼や復興課題を考える企画が開催され、協会役員も多数参加した。








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あいさつする合志名誉理事長
メモリアル集会

借主も貸主も継続希望 神戸市だけが「契約解除」

 1月16日に神戸市勤労会館で開催された阪神・淡路大震災16年メモリアル集会(主催は阪神・淡路大震災救援・復興県民会議)には、市民ら165人が集まった。住江憲勇保団連会長、合志至誠協会名誉理事長、藤末衛評議員らも参加した。
 記念講演を行った室崎益輝関西学院大学教授は、被災者支援制度が阪神・淡路大震災後、2004年・2007年と改正を重ねてきたなかでの成果を評価するとともに、残された課題として、国と自治体の役割分担、支援の多様性の確保などを指摘した。
 森本真神戸市会議員は、民間借り上げ公営住宅入居者アンケート結果を示し、入居者の86%が、このまま住み続けたいと願っているうえ、民間オーナー側も92%が契約の継続を望んでいるにもかかわらず、神戸市は借り上げ期間終了後は契約を継続しないとしているとして、同市の対応を批判した。
 復興住宅での巡回相談を続ける「ひょうご福祉ネットワーク」の前島豊氏は、不況が続き生活費に困る相談者が増えている現状を、「死んだ方がまし」など相談者の生の声を紹介しながら明らかにし、被災者のおかれている苦境を涙混じりに訴えた。
 一昨年の県西・北部水害で大きな被害を受けた佐用町の鍋島裕文町会議員は、住民が粘り強く運動を続け、被災者支援制度の改善を勝ち取ってきた経過を報告、「被災者本位の復興を求め、引き続きがんばっていきたい」と強調した。
 合志名誉理事長と住江保団連会長があいさつに立ち、「借上住宅からの追い出しは、16年かかって築いてきたコミュニティーを再び破壊するもので高齢者は生きていけない。国や県、神戸市の姿勢を厳しく問うていかなければならない」「今年は被災者生活再建支援法第3次改正の年。さらなる改正を実現しよう」と訴えた。

高齢被災者の終の棲家守ろう

理事長  池内 春樹

 阪神・淡路大震災から16年の年月が流れました。昨年の15年目のメモリアルの行事も終わり、今年の新成人は阪神・淡路大震災を覚えていないかもしれません。阪神・淡路大震災の記憶の風化が心配されます。
 そんな中、被災された方々の生活の拠り所である「復興住宅」からの引越しを、老齢を迎えた被災者の方々が迫られています。
 やっと災害時のライフラインで一番大切な人と人とのきずなを回復されて、終の棲家として安心して住み続けたいと考えておられる被災者に、神戸市は107団地3805戸ある全ての復興住宅について、20年の借り上げ期間を延長しない方針です。
 転居先は神戸市が斡旋するそうですが、高齢者に再度の引越しは酷です。今のまま住み続けたい被災者の方々が住み続けられるよう、みんなで応援しましょう。
 1月14日には、西宮・芦屋支部が中心になって『阪神・淡路大震災の経験と記憶を語り継ぐ 被災地での生活と医療と看護~避けられる死をなくすために』が上梓されました。いつ起こるかわからない災害に対処するために、全ての会員のみなさまのご一読をお願いいたします。

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