2011年2月15日(1646号) ピックアップニュース
燭心
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、関税の原則撤廃により農産物などの食料輸入が自由化される。その結果、日本の一次産業は壊滅的打撃を受け、食料自給率は10%台にまで低下すると考えられる。労働力や金融などの輸入も自由化されることで、医療や介護分野にも重大な影響が出るとされる▼日本医師会は昨年12月3日、政府のTPP参加検討に対する見解を発表した。TPP参加で日本の医療に市場原理主義が持ち込まれ、最終的には国民皆保険の崩壊につながりかねない面も懸念されるとした。国民皆保険を「自由化」にさらすことがないように求めた。そして、TPPの流れは混合診療の解禁につながるとした▼混合診療の解禁は、診療報酬によらない自由価格の医療市場が拡大し、外資を含む民間資本にとって魅力的かつ大きな市場が開放されることを意味する。公的医療保険の給付範囲が縮小され、社会保障が後退する。医療機器や医薬品も高騰し、所得によって受けられる医療に格差が生じるとした。また医療への株式会社参入が進み、コスト圧縮を追求することによる医療の質の低下や、利益の追求による不採算な部門や地域からの撤退が起こるとしている▼命は平等である。どんなことがあっても格差医療だけは阻止すべきである。高額の先端医療だけが発達し、地域の病院や診療所などは衰退し、産婦人科や小児科などの医師不足に歯止めがかからないであろうTPP参加には、反対である。(海)