2011年3月05日(1648号) ピックアップニュース
燭心
アフリカに「2頭の象が戦う時、傷つくのは草だ」ということわざがあるそうだ。そのアフリカで今、2頭の象が激しく戦っている。多くの市民が犠牲になっているとの報道に胸が痛む▼チュニジアやエジプトに端を発した民主化運動は、あっという間に北アフリカ、中東全域に広がっている。それぞれの国により事情は異なるだろうが、長年強圧的に君臨してきた巨象をもう1頭の若い象が倒しにかかっている様相だ。なりふり構わず暴れまくる巨象の行方に、世界中がかたずをのんで見守っている▼インターネットの普及を要因にあげる人も多い。自由な情報伝達は民衆の大きな武器だが、それだけではあるまい。人権の抑圧や富の独占からの解放を願う人々のマグマが、古来より歴史を動かしてきた原動力だろう。私たちも富の公正な配分による社会保障の拡充や生存権の確立を求めて運動をしている。きっと草の根でつながっていると、心ひそかに連帯感を持っている▼もちろん、その国の政治のあり方を決めるのは、その国の国民だ。大国が、石油や中東利権といった思惑で介入すべきでないのは当然だ。その上で、平和的解決を目ざし力を合わせるのが日本も含めた先進国の役目だろう。この地は、言わずとしれた人類文化発祥の地でもある。古代より幾多の争いを乗り越えてきた英知もまた、身につけていることと思う。踏みつけられた草も、時が経ち、より強く大地に根付くことを祈っている。(星)