2011年5月15日(1654号) ピックアップニュース
東日本大震災一部負担金免除 来年2月末まで延長 厚労省通知 協会要求実る
東日本大震災被災者の医療費一部負担金の取り扱いについて、厚労省は5月2日付で保険局長通知を発し、来年2月29日まで免除期間を延長するなどとした。
今回の局長通知のポイントは3点。
第1は、これまで5月末までとしてきた免除期間を、ほぼ1年となる来年の2月末まで延長したこと。社保・国保・後期高齢とも同じ扱いだ。
阪神・淡路大震災で国保だけが1年の免除期間だったことからは、前進したと言える。期間の延期を要求してきた協会・保団連の主張が実った形だ。
第2は、免除されるためには被災者が申請し、自治体に「免除証明書」を発行してもらう必要があること。
しかし、被災地の実態に、はたして申請主義が通用するのか。「制度を知らなかった」などの理由で、申請できない被災者が生まれる可能性がある。そうなれば、制度から漏れて医療を受けられない多くの被災者をつくりかねない。
罹災証明の発行などで被災状況を行政が確認できる場合は、被災者からの申請を待つことなく自治体が発行してよいとのこと。しかし、ただでさえ復旧・復興に手を取られている自治体職員に、そんな余裕があるのだろうか。
自治体が6月末までに免除証明書の発行を完了できない場合は、自治体(保険者)が届け出れば、当面は現行のまま続けてよいとしている。「完了した」とする前提として、自治体が全免除対象者を把握していることが必要だが、これも実態に合わないのではないか。
厚労省の机上の理屈が被災者と被災自治体を振り回し、結局そのツケは被災者に回される。
第3は、免除の条件とされてきた6項目の一部内容を変更し、各項目につけられていた「準ずるもの」等の内容を制限したこと。
第1の条件である「住家が全半壊・全半焼」に「準ずる」の内容は、「長期避難世帯に属する者であること」。第2の「主たる生計維持者」が「重篤な傷病」とは、「一カ月以上の治療を有すると認められる者」としていること。内容が分からずに対象外と見られていた人が、これにより対象になる場合もあるだろう。
しかし、一部損壊か半壊か不明の住家も少なくない。また、被災者を診療する医療機関には、大震災による傷病を広くとらえる必要があるだろう。
被災自治体は、被災者全員に免除証明書の可否を判断することが困難であれば、厚労省に実態を訴えていくことが求められている。今でも避難所で「保険証がないので医療機関にかかれない」という声がある。こうしたなかでは、申請主義では被災者を救済できないことを厚労省は理解すべきだ。
協会は、局長通知に対する要望をまとめ、政府・厚労省に提出することにしている。