2011年5月25日(1655号) ピックアップニュース
燭心
やはり福島第一原子力発電所は炉心溶融(メルトダウン)していたのだ。事故発生当初から外国はこの最悪の事態を想定して、日本在住の自国民へ警告を発し対処していた。それなのに、わが国のリーダーや専門家たちの想像力の乏しさは何としたことか。核燃料棒の入った容器の水面が何センチ上がった、下がったと右往左往し、児戯にも等しいヘリコプターからの散水など、本質からずれた対応で時間を空費した。原発が安全・安心・安価なエネルギー源でないことは明らかだ。十分な国民的議論を重ねて、エネルギー政策の見直しが必要となるだろう▼今回の事故の究明に、人間の入れない放射能汚染の高い場所で活躍できるロボットはわが国にはなくて、外国に依存した。巨額の国家予算をつけたロボット技術の開発が、上海万博でバイオリンを弾くロボットを紹介したことで事足りるとするなら、研究者たちの猛反省を促したい▼原発を監視する原子力安全・保安院と原発を推進する経済産業省が、同じ根っこでつながっていることを知って驚いた。人事の面での交流(混同)もあった様子。矛盾も甚だしい。明確に分離・独立した組織でなければ、原発の安全性は確保できないと思われる▼戦後65年、わが国は平和憲法に守られて、戦争をしない国、平和な国として過ごしてきたが、平和ボケが国中に蔓延して、危険を察知する感覚が鈍くなったり、危機に対する想像力が働かなくなっていることを憂う。(硝子)