2011年5月25日(1655号) ピックアップニュース
主張 震災復興財源 消費税増税、社会保障費削減は最悪
東日本を襲った大震災から2カ月以上が経った。いまだ被災者の生活復興とそのビジョンは、めどさえ立っていない。
今月上旬、宮城県の複数の被災避難所を訪問した。特記すべきは、政府の顔が全くと言ってよいほど見えないことだ。
政府の顔が見える時はいつかというと、机上の空論と揶揄されても仕方がない数々の対策会議や、東日本大震災復興構想会議の時だけだ。確かに会議は必要だが、今大切なことは、素早い被災地復興と、それに伴う景気対策のための資金をいかに賄うのかという喫緊の財源論だ。
単純に赤字国債が膨らむことを恐れる政府は、「震災復興税」と称して消費税増税を行おうとしている。また、社会保障支出も削減の方向だ。おまけに国民年金まで減額を議論している。
例えば、消費税の増税にはさまざまな問題がある。
第1は、逆進性だ。富裕層ほど所得に対する税負担率が低いのが消費税の特徴だ。低所得者から集めた財源で震災復興を行うのは間違っている。
第2に、被災者を除外することが難しい点だ。もし、被災者を除外せずに消費税を増税すれば、被災者の状況をさらに困難なものとしてしまうことになる。
第3に、景気に与える影響だ。多くの経済学者が指摘するように、震災で消費が冷え込んでいる時に、さらに消費税増税によって消費が冷えてしまえば、経済復興はさらに遠のいてしまう。
また、社会保障支出の削減も許されない。被災地では、多くの医療機関が震災当初から懸命の医療活動を行っているが、今回大きな被害を被った岩手、宮城、福島は、もともと「医療過疎」が進んだ地域だった。政府の社会保障抑制政策で、医師不足や病院の統廃合が盛んに行われてきたのだ。
社会保障支出のさらなる削減は、こうした状況にさらに拍車をかけるもので、被災地の医療供給体制をより一層破壊するとともに、災害に強い社会をつくることにも反する。
消費税増税も社会保障削減も、震災復興の財源負担をすべて国民に押し付けるものだ。
“官僚のための各種積立金(埋蔵金)全額拠出”“大企業内部留保の活用”“復興国債”など、国民に負担をかけない施策がなぜ論議されないのか。
憲法13条で規定されているように、生命や幸福追求に対する国民の権利を、国は最大限尊重しなければならない。今ここで改めて政府・与党は、国民に約束した“国民生活第一”というフレーズを2年ぶりに思い出すべきだ。