2011年6月05日(1656号) ピックアップニュース
燭心
人類が生物として、この地球上で生存するには、絶対に必要な二つの条件がある。それは、(1)食料の獲得と、(2)寒さ(暑さ)から身を守ることである。飢えと寒さから身を守るため、人類は文明を持った▼かつてマルサスは、人口と食糧の関係に関する理論で、人口は幾何級数的に増加するが食糧生産は算術級数的にしか増加できない、必然的に食糧難となると考えた。しかし20世紀の初め、ハーバーらにより、空気中に無尽蔵にある窒素を固定し、アンモニアを工業的に合成することが可能となった。そのため安価に窒素肥料が合成され、飼料や農産物の大増産が可能となった。今後さらに人工光合成が実用化されれば、食糧の問題はかなり解決されるだろう▼しかし、エネルギー問題はまだ解決されていない。化石燃料は温室効果ガスの問題がある。今回の福島第一原発の事故で露呈したように、核分裂によるエネルギーには、放射能汚染という危険極まりない問題がある。空中窒素の固定は百年も前に完成されたのに、クリーンな太陽エネルギーの固定はいまだ不十分である▼この研究に政府は本腰を入れていたとは思えない。クリーンな太陽光発電の効率が上がれば既得権益者(原子力産業、石油メジャー等)が失業するので、裏で研究の邪魔をしている、と思われても仕方ない。今回の大震災で、太陽光などクリーンエネルギーの研究開発に弾みがつくことを期待する。エネルギー問題は政治問題でもある。(鼻)