2011年6月25日(1658号) ピックアップニュース
主張 〝共助〟は憲法違反 国と大企業の責任が問われている
東日本大震災の被災者支援と福祉・医療の充実は別課題である。しかし、これらの課題が一向に解決に向かわない原因の根幹は同一だ。
平時・非常時を問わず憲法は、25条で国に対して国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営」ませることを義務づけている。また99条は、「国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」と規定している。
つまり、被災者の悲惨な現状や医療機関にかかることのできない多くの人たちを放置している現状は、政治家や官僚の憲法違反といっても過言ではない。
2009年、民主党はマニフェストで、「国民の生活第一」を掲げ、医療費のOECD諸国並みへの引き上げや後期高齢者医療制度即時廃止を公約した。しかし、政権につくと、それまでの自公政権よりもひどい医療費削減、負担増をすすめようとしている。国民を守るどころか犠牲にする露骨な国民生活軽視は、被災者・避難者にも及んでいる。
日本全国で生活の苦しい中、多くの人が行った募金は、震災発生から3カ月を過ぎた今も85%が届いていないという。協会・保団連は震災発生直後から、被災地に多くの医師・歯科医師を派遣し、医療機関の被害状況確認を行うとともに、全国から集まった義援金のほとんどをすでに被災医療機関に配り終えている。
東日本大震災を口実に政府与党・官僚は国民の窮状に乗じて、今まで自民党政権でさえ実行しなかった数々の悪政を強行しようとしている。その代表が「社会保障と税の一体改革」だ。消費税の増税、公的年金の縮小、高齢者の窓口負担引き上げ、窓口負担への定額上乗せなど、一体誰のための「改革」なのか。明らかに国民目線から外れた改革であり、社会保障における国の責任を放棄し、国民に「助け合い」を押しつける最悪の施策である。
政府与党・官僚は、震災復興も福祉・医療の充実も景気対策も、「財源がない」と主張する。しかし、財源がないのではなく、「出す気」がないのだ。
その証拠に、小泉構造改革以降、法人税の引き下げや優遇税制、リストラ、賃金の引き下げ、非正規雇用の活用などで大もうけした大企業の手元には、今年3月の時点で64兆円にも上る「使い道のないカネ」がある。一握りの富裕層の手元にも、所得1億円を境に逆進的になる所得税などさまざまな優遇税制により、多くのカネが余っている。
大企業や資産家に、社会的責任として国債の引き受けや体力に見合った税負担をさせれば、数十兆円の財源はすぐにできるはずだ。今こそ、私たちは国民として、怒りの声を大きく上げなければならない。