2011年6月25日(1658号) ピックアップニュース
福島原発事故 京大原子炉実験所 小出裕章氏講演に280人 放射線被害 直視を
小出氏(右下)の話に聞き入る参加者(6月11日)
データを隠して被害をごまかし、住民に被曝を強制している--。6月11日の協会講演会「福島第一原発事故の真実」で講師の小出裕章・京都大学原子炉実験所助教は、原発事故に対する政府・東京電力の対応を批判し、放射線被害の現状を直視しようと強調した。事故以前から原発の危険性を訴え続けてきた小出氏の話に、集まった医師・歯科医師をはじめ280人の医療関係者からも質問が相次いだ。
小出氏は「想定外」だとされた今回の原発事故について、そもそも原子炉格納容器が壊れることは、想定すること自体が不適当である「想定不適当事故」とみなされていたと指摘した。
原発事故後も、日本政府は事故を小さく見せるため、データをできるだけ公表しないようにしたと説明。放射線の影響を予測する「スピーディー(SPEEDI:緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)」による試算結果を初期段階で秘密にした結果、住民に対する防災がまったく行われなかったと、政府の対応を批判した。
また、今回の事故にチェルノブイリ事故の避難基準を適用すれば、琵琶湖の2倍、日本の法令を厳密に適用すれば福島県全域に匹敵する地域を放棄しなければならないと説明。政府は計り知れない被害をごまかすために法律自身を変えて被曝許容量を緩和し、子どもも含め住民に被曝を強制していると強調した。
小出氏は、「原発事故の被害を本当に金銭的に賠償しようとすれば、東京電力が何回倒産してもあがないきれない。日本の国家が倒産しても、あがないきれないほどの被害に私たちは直面している。多くの人々に現状を理解し危機を乗り越えるための方策を考えてもらいたい」と訴えた。