2011年7月25日(1661号) ピックアップニュース
主張 復興は被災者の生活再建が基本
東日本大震災から、4カ月が経過した。いまだに10万人近い人が不自由な避難生活を強いられている。原発事故も収束の見込みは立たず、放射能汚染は各地に深刻な被害をもたらしている。
そんな中、6月20日の国会で復興基本法が成立した。また、「基本法」を受けて政府の復興構想会議が「提言」を発表した。私たちは、これらの復興政策では、阪神・淡路大震災での失敗の繰り返しになることを危惧する。抜本的見直しを要求したい。
第一の問題点は、「基本法」や「提言」では被災者の生活再建の視点が乏しく、大企業中心の「新成長戦略」が前面に立っていることである。農業・漁業の「集約化」がうたわれ、大企業の参入に道を開く規制緩和(水産特区など)が提言されているが、当の漁業者からは猛反対の声が上がっている。
その一方で、被災者の切実な要求である「二重ローン」解消などには、具体策が示されていない。阪神・淡路大震災では、「創造的復興」と称して大型公共事業に大規模な投資がなされたが、被災者の生活再建は「自己責任」とされ、今なお生活に苦しんでいる人も多い。被災者の生活再建なくして被災地の復興はありえない。基本姿勢から考え直すべきだ。
第二に、復興財源を口実にして、消費税増税に道を開く問題である。「復興法」は復興債の発行を規定しているが、その償還財源として「基幹税の増税」が検討されている。
財界・大企業のかねてからの狙いである消費税増税を、震災を口実に一気にやろうとする思惑が見える。消費税は被災住民にものしかかる税であり、景気回復や生活再建をさらに困難にする。
復興のための財源は、多くの識者が主張しているように、大企業の内部留保の活用や大企業引き受けの国債発行などで賄うべきである。
「基本法」では、国が復興の「基本的な方針」を定め、自治体はこれを踏まえ「措置を講ずる責務を有する」としている。上から押し付けの復興姿勢ととれる言葉だ。
「復興災害」とまで言われた、阪神・淡路大震災での悲劇の教訓が生かされないようでは困る。住民合意で計画を進めるという原則に沿っての復興を強く求めたい。