2011年9月25日(1666号) ピックアップニュース
燭心
元町商店街の一角に小さな映画館ができて1年になる。隠れ家的雰囲気が気に入って、協会の会議の帰りに時々寄り道している。先日雨宿りに見た映画を1本紹介したい▼「人生、ここにあり!」。1983年のイタリア・ミラノ。主人公は精神障害者たちの組合施設の運営を、心ならずも任された一人の中年男だ。イタリアでは1978年に「バザリア法」によって精神病院が廃止された。精神障害者の社会参加をめざしたこの法は画期的ではあるが、当然混乱も引き起こした。そういう時代の話だ▼精神障害者の問題というと重々しいテーマのように思われるが、コミカルにテンポよく物語は進んでゆく。薬で無気力な状態にされている「組合員」たちに、主人公は強引な手段で薬をやめさせてしまう。効果はてきめん、人間らしさを取り戻した「組合員」たちは、がぜん張り切って仕事をしだす。幸運も手伝って事業は順調に進むかに思えたが…▼人間らしさを取り戻すということは、恋もすれば喧嘩もするということだ。一つの事件が起こり、壁に突き当たってしまう。失望した主人公は事業から手を引こうとするが、まあ、ラストはお楽しみにしておこう▼生きづらい現代社会、心の病を持つ人も多かろうが「イタリアで天才が生まれるのは、みんなどこか、いかれているからさ」と人々は言うらしい。さすが、ダ・ヴィンチの国だ。隠れ家を出ると雨も止んで、いい青空だ。ちょっと得した気分で帰途についた。(星)