2011年10月15日(1668号) ピックアップニュース
燭心
「鼻が利(き)く」という言葉がある。広辞苑によれば、(嗅覚が鋭い意から)わずかな兆候から役に立つ事柄を見つけ出す能力を持っている、との意味らしい▼生物の感覚器の中で、実は嗅覚が最も原始的である。地球上に生命が誕生した30億年前、ここに原始生命体、甲乙があったとする。甲は乙に対して、敵か味方かをまず峻別しなければならない。でないと相手に捕食される。さらに、生きていくためには餌となるものへ寄生し、または向かわなくてはならない。原始地球の深い海の底の生命体は聴覚や視覚の如き高等な物理的感覚でなく、遠隔化学感覚である嗅覚に頼る▼これはわれわれ医師にとって納得できることだ。例えば、結核菌は肺へ、腸チフス菌は腸へ、標的臓器として感染する。単細胞生物にも嗅覚あるいは接触化学感覚としての味覚があるらしい。多細胞生物では嗅覚細胞は特殊で、上皮であるのに軸索を有する▼人間では情報の80%を視覚に依存しているが、ここで述べる人間にとっての嗅覚とは社会的感覚としての嗅覚で、筆者のペンネームも鼻だが、これは社会の不公正、矛盾を敏感、迅速に嗅ぎ取って、あたかも税関で麻薬犬が隠された荷物から違法薬物を見つけるように、永田町や霞が関周辺の異臭、悪臭を敏感に嗅ぎ取る▼例えば電力会社のやらせメール、世界で類のない高い電気料金、異常に多い天下り官僚等、東電から出る腐敗臭を嗅ぎ取り、本欄に掲載したく望んでいる次第である(鼻)