2011年10月15日(1668号) ピックアップニュース
インタビュー 県立こども病院なぜ ポーアイ移転(1)〝断固反対〟の声あげよう
兵庫県産科婦人科学会会長
元こども病院周産期医療センター長
大橋 正伸先生
県立こども病院のポートアイランド移転問題について、関係者インタビューをシリーズで掲載する。初回は、元こども病院周産期医療センター長で県産科婦人科学会会長の大橋正伸先生(須磨区・若宮病院院長)に話を伺った。
こども病院は県下の周産期・小児医療の砦であり、各地から患者を受け入れ、救急医療でも重要な役割を果たしています。
災害に強い拠点病院を安全な場所につくる-。大事なことではないでしょうか。県内最大の周産期医療センターを持つこども病院は、胎児・妊婦・新生児にとって安全な場所になければなりません。ポートアイランドへの移転には断固として反対です。
MFICU(母体・胎児集中治療室)やNICU(新生児集中治療室)、PICU(小児集中治療室)の増設は、現地で十分可能です。
大事なのは、災害に強い立地であること
こども病院の周産期医療センターにいたとき、阪神・淡路大震災が起こりました。病院は停電し、MFICUやNICUが使えなくなりました。インキュベーターやレスピレーターなどにつなげられた、微妙なコントロール下にある新生児を他医療機関へ移すのは、本当に大変でした。ヘリコプターに乗せることもできない。大人を動かすのと訳が違います。
県当局は大津波は来ないと考えているのかもしれませんが、東日本大震災を経験した今、もう「未曾有」や「想定外」という言葉は使えません。ポートアイランドに移して、もし大地震や大津波が来たら、神戸大橋が使えなくなり病院へのアクセスが遮断されてしまいます。島外からスタッフがかけつけることもできません。
こども病院ほどの規模の医療機関なら、どんな災害が起きても大丈夫な場所につくり、県下に発生した大災害時の受け入れ拠点病院となるべき使命があり、それを果たし得る、絶対に安全な場所に整備しなければなりません。災害時も、拠点としての役割を果たさなければならないはずです。
なぜ、神戸中央市民病院の横か
東日本大震災で宮城県の石巻市立病院は津波にのまれましたが、石巻赤十字病院は5年前に浜から離れて内陸へ移転していたため被災を免れ、今回、救急をはじめ被災地医療で重要な役割を担うことができました。神戸中央市民病院に隣接させれば、大災害時に双方とも機能停止に陥ったとき、兵庫県の周産期医療は崩壊してしまいます。
すでに周産期医療センターを持つ中央市民病院の横に移す必要性があるとは思えません。病院を隣り合わせにしても、やり方や考え方がそれぞれ違うだろうし、単純に相乗効果があるとは思えません。
わざわざ移転させてまで、こども病院が先端医療を行う必要があるのかも疑問です。難治性血管疾患治療や小児がん治療への低侵襲性放射線療法などの高度専門・特殊医療を拡充するとしています。もちろん大事なことですが、頻度を考えても、移転の理由にはなりません。こじつけのように感じます。
小児科の先生方とも連携して、「断固反対」の声をあげていきたいです。
(聞き手・吉岡巌副理事長)