2011年10月25日(1669号) ピックアップニュース
主張 野田政権 憲法に基づく政治を 財界・米国主導の政策許すな
哲学はヘーゲルの弁証法で終わったとの意見があるが、人類が生存している限り「問いに対する答え」としての哲学は不滅だ。今、政治哲学の分野では「無知のベール」で有名なロールズの流れを汲むサンデルの『これからの正義の話をしよう』がベストセラーになっている。何が正義か衆議を尽くし、より高みを目指そうとするものだ。
民主党政権になって2年、2人の首相が交代した。鳩山首相は「友愛」を掲げて対等な日米関係を、菅首相は「最小不幸社会」を目指した。野田首相は「中庸」を目指すそうだ。だんだん理念が不鮮明になっているのが心配だ。
野田首相には、日本国憲法の理念に従うとはっきり言ってほしい。日本国憲法は第2次世界大戦後の壊滅的な状況から日本が立ち上がるのに際して、世界中の憲法の良いところと、人間にとって一番大切な平和と幸福、社会保障、人権を高らかに謳い上げたものだ。民主党が掲げた「国民の生活が第一」の土台だ。
政治家も官僚も国民も、憲法の精神に沿った法律を作り、世界の平和と日本国民の福祉の向上に努めなければならない。その先頭に立つのが首相の務めだ。
今、一番急がなければならないのは、東日本大震災からの復旧・復興だ。そのためには、大規模な第3次補正予算が必要だ。グローバル化した経済では一国の独り勝ちは許されず、世界中がお互いに支えあうシステムの新たな構築が求められている。世界連邦が具体性を持ってきている。新自由主義のメッカ・米国でも、「貧困なくせ、失業なくせ」のデモが全米に広がり始めている。
野田首相は組閣前に、日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の財界3団体を訪問して、「国家戦略会議」への協力を求めた。小泉政権での「経済財政諮問会議」が復活する。日本経済の活性化は緊急の課題だが、「国家戦略会議」が財界と米国主導で、原発の再稼働、復興財源に名を借りた消費税の10%への増税、平成の壊国であるTPP参加、社会保障の排除など新自由主義政策を復活させてはならない。
国税庁の発表によると、年収200万円以下の給与所得者が1000万人を超えた。「税と社会保障の一体改革」が本来の意味での所得の再分配を行えるよう、今こそ、財界と米国の独り勝ちでない、皆が働け労働に見合った正当な報酬を得られる、憲法が光り輝く、平和と社会保障を基盤とする福祉の国日本をつくろう。署名活動やラジオ出演、地元選出国会議員への要請行動を強化しよう。