2011年11月05日(1670号) ピックアップニュース
燭心
全国医学部長病院長会議は今年5月、医学生の学力低下に関する調査結果を公表した。2007年の医学部定員増加以後、医学生の学力は低下傾向にあり、留年者は増加しているとの結果だ。医学部入学者の大学入試センター試験、一般試験の平均点、最低点は定員増以後に低下し、予備校の模擬試験の医学部入学者の偏差値が低下しているとした▼その原因は、4年間で1298人の医学部入学者の増員が図られたことによるとしている。すなわち、医学部入学者は1965年に700人に1人だったが、今や130人に1人が医学部に入学する時代となっており、医学部入学の難易度は以前の5分の1に低下しているとした▼医師には、日々増大する膨大な量の医学知識や最新の技術技能を習得するなど、一定レベルの高い知的能力が必要とされる。学力レベルなどの資質に問題のある学生が増加すれば、将来の日本の医師の質の低下を招くとしている。したがって、医師数を増加するよりも、医師の配置や偏在の是正が望まれるとしている▼筆者はこの意見に反対だ。高齢者をはじめとする患者の増加は顕著であり、医師の偏在の是正で追いつくものではない。患者の増加は、国民皆保険制度によってすべての国民が医療を受けられるようになったことによる。無保険時代は、お金がなくて死ぬまで医者にかかれない人が大勢いた。こういう暗黒時代は御免である。医学の進歩とともに医師も増加させねばならない。(海)