2011年11月25日(1672号) ピックアップニュース
主張 TPPと皆保険 医療の市場化・営利化は米国の積年要求 参加反対運動を強めよう
野田首相はAPECの席上で、日本が環太平洋経済連携協定(TPP)参加に向けた交渉に入ることを表明した。
私たちは、先の評議員会決議においても「国民皆保険制度の崩懐をもたらす」としてTPP参加に反対の意思を示した。改めて抗議を行うとともに、表明の撤回、TPPへの不参加を断固要求する。
TPPは、すべての関税の原則撤廃など「高いレベルの貿易自由化」をめざすもので、協議の対象となるのは関税のみならず、「あらゆる品目、サービス」とされている。
この中には、アメリカの積年の対日要求である混合診療の導入や医療機関経営への営利企業の参加が含まれることも、首相は否定しない。新しい技術や薬を公的保険の対象とせず、米国をはじめとする民間営利資本に市場開放する狙いが込められている。
わが国が長年培ってきた、保険証1枚で誰でも必要な医療が受けられる国民皆保険制度に制限が加えられ、貧富の格差を持ち込み崩壊させるものとして、日医、日歯をはじめ国内の多くの医療団体も反対を表明している。
「食の安全と健康」の問題も、医療人として看過できない。現在、米などの農産物にかけられている関税が撤廃されることによって、わが国の食糧自給率はわずか13%に落ち込むと農水省は推計している。先進国では突出した低さであり、食糧主権を放棄するに等しい。
代わって輸入される外国産の食糧には、安全性が危惧されるものも多い。すでに牛肉などの安全性検査や野菜・穀物類の使用農薬の規制緩和が取りざたされているが、これらの健康への影響は未知の部分が多い。
わが国には、過去に水俣病やイタイイタイ病など、有害物質により大きな健康被害を受けた苦い歴史がある。日本独自の厳しい規制は、その教訓でもあることを忘れてはならない。
報道各紙の調査でも、正確な情報が「知らされていない」とする国民が圧倒的だ。すでに農・漁業団体や市民・消費者団体、医療団体など、かつてない規模の団体・個人がTPP反対の立場を表明しており、運動はまさにこれからだ。国民に真実を伝えよう。
私たちも、運動の一翼となって奮闘することを会員に呼びかけたい。