兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年4月05日(1683号) ピックアップニュース

(1)リハビリ 現実を無視した改悪

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広畑センチュリー病院理事長
協会病院有床診療所対策部長
石橋 悦次先生(姫路市)

2012年 診療報酬改定インタビュー
 政府の「社会保障・税一体改革」の具体化として位置付けられている今次診療報酬改定について、今号よりシリーズでインタビューを掲載する。聞き手は編集部。

医療から介護へ露骨な政策誘導
 ――運動器と脳血管疾患の維持期リハビリテーションが、要介護・要支援者については原則2014年3月末までで打ち切りとされました。
 維持期リハビリについても「医療から介護へ」の流れが非常にはっきりした同時改定です。医療保険でリハビリを受けられなくなった患者さんは、介護保険の通所リハ(デイケア)や通所介護(デイサービス)を利用せざるを得なくなります。
 医療費抑制を目的に患者の実態を無視して強引に介護保険へ誘導するもので、現実を踏まえた改定では到底ありません。
 ――介護保険で患者さんは十分な維持期リハが受けられるのでしょうか。
 いくつかの問題により、必要なリハビリを受けることが制限されるでしょう。
 一つは、介護保険の通所リハをしている施設が地域に偏在しているからです。当病院には回復期病棟があるので、退院した患者のために病院・診療所両方で維持期リハのための通所リハを実施していますが、そのような医療機関がある地域は少ないのではないでしょうか。神戸市内でも通所リハをしている事業所がたくさんあるかというと、そうではありません。
 また、医療でのリハビリは、医師の指示のもとで理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)ら専門職が行うものです。それに比べ介護では、医師の手から離れたところで、必ずしも医療の専門職が行うわけではないため、維持期における的確なリハビリが行えなくなる恐れがあります。
 さらにデイサービスになると、リハビリを目的としたものではありません。回復期病棟を退院してケアプランをたててデイサービスを利用している患者さんで、全然リハビリが受けられないからなんとかしてほしいとの訴えがたくさん寄せられています。
 今後リハビリ難民が発生することは十分考えられます。
維持・回復の道閉ざすのか
 ――政府は維持期リハの役割を過少評価しているように感じます。
 国としては、回復期リハビリをすぎた人はもはや対象ではないという感覚なのではないでしょうか。「回復のめどがないのだから、やっても意味がない」と。
 しかし、回復期病棟だけで容態が良くなるわけではありません。長くやっていくことで良くなる人は実際にたくさんいるわけです。時間はかかっても、続けることで確実に回復してきています。
 例えば脳梗塞を起こした人でも、60代のようなまだまだ元気なうちなら、回復期病棟から退院して半年から1年くらいリハビリを続けることで自立歩行が可能になるケースが頻繁にあります。
 また、回復しないまでも、維持することで介護度が全然変わってきます。
 リハビリを続けることで回復が見込める人、悪化しないために続ける人、両者を制度によって切り捨てることになります。許されるはずがありません。
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