2012年4月25日(1685号) ピックアップニュース
主張 生活を脅かすTPP なぜ、突き進むのか
以前なら「TPPって何?」という状況であったが、TPPが将来の日本国民の生活に重大な影響を及ぼすことは、協会会員だけでなく多くの国民にも周知されつつある。
一方、ゴールデンウィークに野田首相が訪米の手土産としてTPP参加表明を行うのではないかとも言われている。
背景に米国財界
もともとTPPは、ブルネイ、チリ、シンガポール、ニュージーランドの4カ国で発行した貿易協定で、その後にアメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルー、マレーシアが交渉に参加している。
多くの途上国が参加するTPPだが、日本にとって主要な交渉相手が米国だということは一般的になりつつある。
ここで「米国」を、「米国多国籍企業」と置き換えると、日本の市場を徹底して開放させたがっている米国企業の姿が見えてくる。とりわけ、日本の公共サービス、中でも医療の市場化を狙っているのだ。
このように言うと、あたかも「米国陰謀説」だとして一蹴されることがある。しかし、米韓FTAやNAFTA(北米自由貿易協定)におけるラチェット条項やISD条項などが、米国大使館や米国通商代表部(USTR)のウェブ上で公開されており、USTRはこれらをTPPのモデルにすると表明している。この二つの条項を読むと、自由貿易規制撤廃を強行する内容であることがはっきりわかる。
国民の損失隠す政府
このように、米国や米国企業はTPPにおける自らの思惑を堂々と公開している。TPP締結のメリットは日米の輸出型多国籍大企業が享受し、デメリット(貧乏くじ)は日本国民が引くことになる―このことを、こそこそと隠蔽している日本政府の姿勢こそ、陰謀めいている。
経済産業省は、TPP参加による経済効果を10年間で2.7兆円と試算している。仮に試算が正しいとしても、その代償として、WHOが「健康達成度」1位と評価した優れた医療制度や、協会・保団連も含む各種の共済制度、ただでさえ低い食料自給率など、日本国民がこれらの一部または大半を失えば損失はその数十倍にも及ぶだろう。
「TPP条約を結ぶかどうかは日本の国会で」というが、決定されるその内容が秘密にされ、国民には開示されない可能性もある。
日本国民が営々として積み上げた有形無形の財産を台無しにするTPP参加。国会も通っていないまま、勝手なことを野田首相にさせないよう、声を大にして反対を訴えなければならない。