兵庫県保険医協会

会員ページ 文字サイズ

兵庫保険医新聞

2012年6月25日(1690号) ピックアップニュース

主張 子ども医療費 自治体の窓口負担無料化 ペナルティーを廃止せよ

 自治体による子ども医療費の無料化が広がっている。福祉国家なら当然でありむしろ遅いぐらいだ。
 そんな中、「窓口負担をなくしたら国からペナルティーが」と、5月の兵庫経済懇談会で嶋田正義福崎町長が発言した。
 福崎町は、2010年から医療費窓口負担無料を中学校3年生まで拡充している。しかし、医療費無料化に対し、国は福崎町に支払う国庫負担金を減額しており、その金額は年間1250万円にのぼるという。全国でも同じようなケースが頻発している。(※)
 この〝ペナルティー〟は子育て支援に逆行するとして、全国市長会が毎年、廃止するよう要望するなど、自治体から廃止を求める切実な声が出ている。
 〝ペナルティー〟に対する国の言い分は「窓口負担を減免している自治体では、通常よりも受診が増え、給付費が不必要に波及増している」ため、自治体ごとの「波及増」の額を算出して、その分を定率国庫負担から減額しているということだ。子ども医療費に加え、障害者、高齢者、一人親などの医療費助成も対象となる。
 この制度は、随分前から実施されている。1983年に吉村仁厚生省保険局長が〝医療費亡国論〟を主張し、「このまま医療費が増え続ければ、国家がつぶれるという発想さえ出てきている」と述べた。これが国(官僚)の思考のベースにあり、ペナルティー制度を生み出していると考えられる。
 しかし、〝医療費亡国論〟のように、医療費を含む社会保障費は本当に国を滅ぼすのだろうか?
 社会保障費の割合が非常に高い北欧型高福祉国家では、国民一人当たりGDP(国力を示す指標の一つ)の増加率は、95年から2008年でノルウェーは2.64倍、フィンランドは2.31倍などとなっている。多くの北欧諸国はむしろ大きく成長し、国を活性化させているのだ。一方、日本はほぼゼロ成長である。
 子どもたちや障害者らが安心して医療にかかれるために、窓口負担を無料にするのは当然だ。本来なら国が行うべき仕事であろう。それを地方自治体が地域住民のために、率先して行っているのだ。それなのに、国は感謝どころか、逆にペナルティーを科すという。
 こういう国の施策を、医療人として決して看過できない。協会は、ペナルティーの廃止を強く求めて運動を展開していく。
 問題を幅広く国民に知らせ、しっかりとした民意を築き、運動の力としていくことが必要だ。
※乳幼児で71億3千万円、全体で361億円が減額されている(2009年度)
バックナンバー 兵庫保険医新聞PDF 購読ご希望の方