兵庫県保険医協会

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兵庫保険医新聞

2012年9月05日(1696号) ピックアップニュース

燭心

 わが家のエアコンが壊れてしまった。買い換えようかとも思ったが、エアコンなしの生活に挑戦してみることにした。もちろん目標は脱原発。放射能に苦しむ福島の人たちを思えば、これしきの暑さ、火もまた涼しだ▼便利な生活で忘れていたものが戻ってきた。窓を開け放ってみた。風、セミしぐれ、子どもたちの声、雨の音、土の匂い、いろんなものが家の中に入ってくる。物置にしまっておいた扇風機や蚊取り線香にも出番がやってきた。こんなに便利なものだったかと、改めて気づかされる。思えばひと昔前、私たちの暮らしはこんなだったはずだと、帰省のおり母と話した少年の頃の思い出。今年のお盆である▼「電気が足りない」と電力会社は言い、国は原発を再稼働させた。しかし予想を下回り、原発なしでも十分やっていけるレベルの電力需要で推移している。家庭での節電が大きな役割を果たしているという。わが家みたいにささやかな挑戦をしている人がたくさんおられるのだろう。目に見えぬ連帯感に、微笑む人も多かろう▼毎週金曜日の夕方、首相官邸前で、何万人もの人が脱原発を求めて集っている。「大きな音だね」と野田首相は言ったらしいが「声」には聞こえなかったのか。放射能に故郷を奪われた人たちのお盆はどうだったのだろうか。ご先祖様の霊も迎えてくれる人々がいなければ悲しかろう。官邸もエアコンを切って窓を開ければ、国民の声が少しは聞こえると思うのだが。(星)
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